研究課題
本研究は培養腫瘍細胞株ならびに実験動物において、SHH pathwayが腫瘍幹細胞の遊走に与える影響について評価することを目的としている。手術にて摘出された悪性神経膠腫組織を迅速にNeural tissue dissociation kitにて細胞浮遊液とし、抗CD133抗体-マイクロマグネットビーズと反応させ、自動磁気細胞分離装置であるAuto MACSにてCD133陽性細胞を抽出した。それらCD133陽性細胞を無血清かつ種々の増殖因子の存在下に培養し、3例においてtumor sphereの形成が得られた。SHHの存在下ではsphere径が大きくなり、また抗PATCHED抗体の存在下ではsphere形態が失われることから、SHH pathwayはstemnessの維持に関与していることが示唆された。継代培養する過程において培養皿に接着し接着細胞として増殖する細胞群が確認されたが、これらにおいては通常の悪性神経膠腫細胞株よりも豊富にCD133陽性細胞が存在することを見いだした。また、CD133陽性/陰性細胞におけるSHH pathwayの遺伝子発現を解析したところ、16例中15例にPATHCED and/or SMOOTHENEDの発現を認めたが、陽性細胞/陰性細胞において特徴的な差はみられなかった。CD133陽性細胞をマウス脳に移植し悪性神経膠腫モデルマウスの作製を試みたが成功しておらず、手技上の問題に加え、手術切除標本から陽性細胞を得ていること、一度に採取できる陽性細胞数が少ないこと、腫瘍幹細胞培養の難易度が高いこと、継代培養により腫瘍形成能が低下していること等が原因として考えられ今後の課題である。
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British Journal of Neurosurgery
巻: 29 ページ: 206-212
10.3109/02688697.2014.967750