同意が得られた臨床症例に対し、無侵襲型眼球運動モニタリングを行った。症例は、開頭頭蓋内腫瘍摘出術を施行した聴神経鞘腫3例でった。装着は勘弁に行われた。全例で術中に患側外転神経刺激を行った。一部の症例では、ノイズが多く、また圧刺激に対して反応がでない例が見られた。これらは、眼瞼へのセンサーの圧着に問題がある可能性が示唆された。このため、さらに装置およびソフトを改変した。この改変により圧刺激による無反応は優位に改善した。 本モニタリング使用による眼球損傷などの副作用は全く見られなかった。 術中外転神経刺激により、誘発された眼球運動によると考えられる波形が見られたが、刺激と反応に再現性が乏しく、判定が困難であった。 感圧センサーには、頻回の刺激により、反応が減弱する特性があり、刺激初期には強い反応が見られるものの、刺激を繰り返す事により反応が徐々に減弱することを確認した。従って、本モニタリングシステムを使用する際には感圧センサーの特性を考慮し、実際の使用時には、一回のモニタリングにおける刺激の頻度を減らし、数回のモニタリングを擁する場合には、しばらく時間をおく(数分で充分)必要があることが示唆された。 顔面神経刺激時に生じる偽陽性反応は本モニタリングの原理上、排除することは困難であり、本モニタリング使用上の最も重要な注意点であると考えられた。これらより、本モニタリングにより、未だ充分な眼球運動神経の同定には至ったいないが、本モニタリング使用に際し、的確なセンサーの圧着、顔面神経刺激時の疑陽性反応、感圧センサーの頻回刺激による反応減弱の3点に注意すべきことが明らかになった。
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