研究課題
今年度の実績は以下のとおりである。①「多施設共同研究による本邦における転移性脳腫瘍のデータベース作成を開始」これまでの転移性脳腫瘍の診断・治療は癌腫によらず、「転移性脳腫瘍」と一括されて行われてきたが、癌腫によって治療方針を決めることにより予後が改善する可能性がある。転移性脳腫瘍に対する有力な治療方法の検討やバイオマーカーを含む予後因子を明らかにするために、多数の治療実績のある、国立がん研究センター・静岡県立がんセンター・大阪府立成人病センターなど10施設における共同研究体を組織した。大学医療情報ネットワーク(UMIN/INDICE)のシステムを用いてデータ登録を行い、各施設の転移性脳腫瘍の臨床・病理・画像・遺伝子発現情報などを集積している。癌腫毎のガイドライン作成の手がかりとなることを期待する。②「国立がん研究センターにおける転移性脳腫瘍に対する手術の適応と役割について再検討」転移性脳腫瘍の予後因子・手術適応と役割について、2000年1月より当院で転移性脳腫瘍を切除した264症例を対象として検討した。全症例の生存期間中央値(MST)は12.4か月、手術関連死(30日以内)は1.5%、永続的神経症状悪化は4.2%だった。手術によりKPSが改善する見込みの低い例、全身療法の予定がない例は生存期間が短く、手術適応は慎重に検討する必要がある。術前・術後のKPS不良(70未満)、術後の全身療法がなされていないこと、頭蓋外病巣の制御がされていないことが、早期死亡に関わる因子だった。手術によりKPSが改善する見込みの低い例、全身療法の予定がない例は生存期間が短く、手術適応は慎重に検討する必要があると考えられた。③「肺小細胞癌を対象とした遺伝子解析」肺小細胞癌による転移性脳腫瘍に特徴的な遺伝子発現を探索するために、原発巣、脳転移巣、他臓器転移巣の遺伝子発現解析を開始した。
2: おおむね順調に進展している
国立がん研究センター・静岡県立がんセンター・大阪府立成人病センター・新潟県立がんセンターなど稀少がん例も十分な統計解析可能な症例数が集積できるように、10施設による共同研究隊を組織したことにより大規模な質の高い研究を行うことができると考えられる。共通の研究計画書を作成し、各施設の倫理審査委員会の承認もえている。サンプルも含め、今後オンライン登録により、転移性脳腫瘍に対して診断・治療を行った症例の臨床情報や病理組織などの試料を収集してデータベースを作成して、当院に組織サンプルとも集めて治療成績や予後因子を検討する。
【臓器別の転移性脳腫瘍に特徴的な臨床経過・遺伝子発現解析の実施】様々な癌の脳転移を一括して予後を解析するこれまでの方法から、多施設の転移性脳腫瘍のデータを収集して、癌腫毎の解析を行う予定である。【放射線治療の感受性に関する遺伝子発現解析の実施】現在進行中の転移性脳腫瘍に特徴的な遺伝子解析・放射線治療の感受性に関する遺伝子解析等について、当院だけでなく他施設から組織サンプルを集めて解析をすすめていく。
今年度は、多施設共同研究体を組織し、当院での臨床データをおもに収集・解析したため、人件費は使用しなかった。3年目に遺伝子解析・データ解析のために、人件費として使用予定である。
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