研究課題
①「多施設共同研究による転移性脳腫瘍のデータベース」を構築した。転移性脳腫瘍に対する有力な治療方法やバイオマーカーを含む予後因子を明らかにするために、国立がん研究センター・静岡県立がんセンター・大阪府立成人病センターなど転移性脳腫瘍の多いがん拠点病院による共同研究体を組織した。大学医療情報ネットワーク(UMIN/INDICE)のシステムを用いてデータ登録を行い、各施設の転移性脳腫瘍の臨床・病理・画像・遺伝子発現情報などを集積している。がん性髄膜炎・子宮癌や肝臓がんからの脳転移の予後因子解析など、本研究によらず継続的な研究が可能となった。今後癌腫毎のガイドライン作成の手がかりとなることを期待する。②初発乳癌の原発・脳転移巣ついて、ER,PR,HER-2の変化を検討し、約30%で発現が異なることが明らかとなった。原発巣でHER-2(-)症例のうち12%が脳転移巣でHER-2(+)に変化し、これらの症例ではtrastuzumab投与が行われておらず、trastuzumabをあらたに投与できる症例があることがわかった。Trastuzumab投与例では経過中に癌性髄膜炎を認めず、また脳転移巣でもtrastuzumab投与例では予後良好であることが明らかとなった。③原発性脳腫瘍で最も多い膠芽腫の標準治療薬はテモゾロミドであり、その効果予測因子としてMGMTプロモーターのメチル化がある。転移性脳腫瘍に対してもテモゾロミドが有効な例があることが報告されており、肺腺癌・肺扁平上皮癌・乳癌・大腸癌などの脳転移60例についてMGMTプロモーター領域のメチル化を検討した。しかしながらMGMTプロモーターメチル化を示した症例はいずれも10%以下であり、テモゾロミド単独での治療は十分とは言えないが、メチル化の強い例もあるため、一部の症例ではテモゾロミドが有効である可能性が示唆された。
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