研究課題
神経膠芽腫患者由来腫瘍組織から無血清培地を用いたneurosphere法を使用して樹立し、その後3ヶ月以上の長期培養が可能であった腫瘍細胞凝集塊(LC-TS)の2株(GDC40およびGDC90)に関して、その詳細な特性解析を実施した。遺伝子発現解析の結果では、GDC40細胞と比較して、GDC90細胞では神経幹細胞で高発現するNESTIN、PAX6に加え、放射状グリア細胞で発現が見られるGFAPおよびBLBPが高発現することが明らかに成った。iPS細胞由来神経前駆細胞とのin vitro共培養系を用いた解析では、GDC90細胞は神経前駆細胞の神経分化を強力に支援する特性を有し、逆にGDC40細胞にはそのような特性は見られないことが明らかに成った。一方、NOGマウスの脳内への移殖実験では、GDC40細胞は浸潤性の著明な大きな腫瘍塊を形成する特性を有したが、GDC90細胞からは大きな腫瘍塊形成は見られず、in vivoでの腫瘍塊形成能力が非常に小さいことが明らかに成った。以上の結果から、膠芽腫組織から同様の手法を用いて樹立した2株のLC-TSにおいて、in vivoでの腫瘍形成能が大きく異なる細胞が存在することが明らかになり、その特性差に幾つかの遺伝子発現の差異が関与することが示唆された。今後、両細胞の特性差に関する検討をさらに詳しく実施することで、LC-TSの腫瘍形成能を解明する手がかりが得られる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究2年目の25年度は2株のLC-TCを主たる解析対象としてそのin vitroにおける詳細な特性解析とin vivoにおける腫瘍形成能評価を其々実施し、腫瘍形成能の差異に関与する可能性がある細胞特性とマーカー遺伝子に関して幾つかの知見を得ることができた。これら知見は、今後、本研究の目的であるLC-TSの生物学的意義とグリオーマ幹細胞(GSC)の生存・増殖・未分化性維持に関わるin vitro ニッチの解明を行う上で重要な知見であり、中間年度の成果としては概ね順調に研究は進展したと判断する。
今年度得られた研究成果を基礎に、最終年度の26年度はより多くのLC-TC株を解析対象に加え、25年度得られた知見の普遍性の検討を行い、LC-TSの生物学的意義とGSCの生存・増殖・未分化性維持に関わるin vitro ニッチの解明につながる知見の探索を実施していきたいと考える。
予定よりも消耗品費の支出が少なく済んだため、次年度使用額が生じた。平成25年度経費の中で532,717円の未使用分があり、これを次年度に繰り越し、26年度は合せて1,332,717円を消耗品費を中心に使用して研究を実施する予定である。
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