研究実績の概要 |
【目的】今回の研究ではラット坐骨神経結紮 (CCI) モデルのマイクロアレイ解析によって得られた有意遺伝子の候補から治療薬や病態解明に関係する物質がないかどうか検討することを目的とした。 【方法】CCIラットと、コントロールを比較してマイクロアレイ(Agilent Rat Whole genome)による網羅的遺伝子発現解析を行った。発現増加遺伝子7個、発現低下遺伝子5個をピックアップしReal-time RT-PCRを行った。特に発現低下遺伝子のNogginについては、CCI後2週経過時点でくも膜下腔にNogginタンパクをAlzet pumpを用いて持続注入しアロジニアの改善がみられるか検討した。またNogginはBMP4のアンタゴニストであり、BMP4のくも膜下腔持続注入などを組み合わせて更なる検討を加えた。 【成績】4つの発現増加遺伝子(IGF-1, PAP, Timp3, Aquaporine4, CD38, CD68)と、2つの発現低下遺伝子(Opioid receptor-like1, Noggin)がReal-time PCRにおいてコンファームされた。発現増加遺伝子はグリオーシスや炎症細胞に起因する遺伝子であった。発現低下遺伝子であるNoggin をCCI後2週でくも膜下腔持続投与したところ、投与後1週後でアロジニアの改善がみられた。そこでNoggin投与、BMP4投与、BMP4+Noggin投与3群に分けてCCI後2週時点でくも膜下腔投与を行ったところ、Noggin投与においてのみ投与後1週間でアロジニアの改善が得られた。 【結論】ラット坐骨神経結紮モデルにおける網羅的遺伝子発現の結果から、発現増加遺伝子4、発現低下遺伝子2つが得られた。BMPの拮抗物質であるNoggin遺伝子の発現低下がみられたため、Nogginタンパクのくも膜下腔持続投与を行ったところ、投与後1週時点でアロジニアの改善が得られた。
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