研究課題/領域番号 |
24592187
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高橋 和久 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20179477)
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研究分担者 |
大鳥 精司 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (40361430)
井上 玄 北里大学, 医学部, 講師 (80594209)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 神経成長因子 / 椎間板性腰痛 / 変形性膝関節症 |
研究概要 |
本研究では椎間板性腰痛に対する抗NGF療法の効果を確認するため、雄性SDラットの第5/6尾椎(以下Co)椎間板を24G針にて10回穿刺したのちCo5、Co7椎体にKワイヤー刺入しバンドにて圧迫を加えて尾椎椎間板穿刺圧迫モデルを作成した。処置4週間後にCo5/6椎間板に逆行性神経トレーサーであるFluoroGold(以下FG)を留置し、そのうち、無治療群、抗NGF中和抗体50μg、100μgを局所投与した群と、抗NGF中和抗体50μg、100μgを腹腔内投与した群に分け、さらにCo5/6に対して無処置でFGのみ留置したコントロール群を用意した。処置1、2、4週間後に還流固定、両側のS1-S3 DRGを摘出した。DRGは抗CGRP(炎症性疼痛ペプチド)抗体、TRPV1(カプサイシン受容体)による免疫組織化学染色を行い、蛍光顕微鏡を用いてFG陽性細胞中のFGとCGRP、FGとTRPV1でそれぞれ二重標識される細胞の割合を算出し、各群間で比較検討した。 結果、抗NGF中和抗体を投与した4群において、FG陽性細胞中のFGとCGRP、FGとTRPV1でそれぞれ二重標識される細胞の割合は生食を投与した群と比べ、有意に少なかった。しかし、抗NGF中和抗体を投与した4群間では明らかな有意さを認めなかった。 上記より、椎間板性腰痛に対して抗NGF中和抗体の投与が有効である可能性が示唆された。しかし、抗NGF中和抗体の投与量、投与方法による支配感覚神経におけるCGRPとTRPV1の発現量の違いは認められなかった。抗NGF中和抗体の有効投与量、有効投与方法については今後検討の余地がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の予定では、上記の研究の他に、in vitroの実験系を完了する予定であったが、完了することができなかった。その理由として、新生児ラットの後根神経節細胞の培養に時間を要したためである。しかし、in vitroの実験系も近日中に完了する予定であり、平成25年度の研究予定にもほとんど影響はないものと考える。 以下現在進行中のin vitroの実験系の詳細を記載する。ラット尾椎椎間板傷害・圧迫モデルの処置後4週の尾椎変性椎間板を採取し、酵素処理、単層培養を行う。また、神経細胞として新生児ラット(P7)のDRGを摘出、単離させた後根神経節を使用する。ラット尾椎変性椎間板髄核培養上清のみ(NP群)、髄核上清に抗NGF中和抗体を加えたもの(NP+antiNGF群)、mediumのみ(Ctrl群)のそれぞれの中で後根神経節を37℃、24時間培養を行う。培養後、炎症性疼痛ペプチドであるCGRPにて免疫組織化学染色を行い、最も長く伸びた軸索長を測定し平均値を計測、軸索を伸長しているDRG細胞におけるCGRPの陽性率を算出し、3群間において比較する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はラット変形性膝関節症モデルにおける抗NGF中和抗体の有効性について検討する予定である。ラット変形性膝関節症モデルは軟骨を選択的に破壊するMonoiodeacetate(MIA)溶液を右膝関節内に注射する事により作成する。処置4週間後に右膝関節内に逆行性神経トレーサーであるFluoroGold(以下FG)を留置し、そのうち、無治療群、抗NGF中和抗体50μg、100μgを局所投与した群と、抗NGF中和抗体50μg、100μgを腹腔内投与した群に分け、さらに右膝関節に対して無処置でFGのみ留置したコントロール群を用意した。処置1、2、4週間後に還流固定、両側のS1-S3 DRGを摘出した。DRGは抗CGRP(炎症性疼痛ペプチド)抗体、TRPV1(カプサイシン受容体)による免疫組織化学染色を行い、蛍光顕微鏡を用いてFG陽性細胞中のFGとCGRP、FGとTRPV1でそれぞれ二重標識される細胞の割合を算出し、各群間で比較検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の繰り越し分は、本年度に達成できなかったin vitroの実験系に使用予定であり、次年度(平成25年度)の研究費は予定通り、使用動物、手術器具、抗NGF中和抗体を含む各種免疫染色用抗体、その他消耗品等の物品費並びに、成果発表のための旅費に使用する予定である。
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