研究課題/領域番号 |
24592188
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
榎本 光裕 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任講師 (90451971)
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研究分担者 |
若林 良明 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (00431916)
早乙女 進一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄付講座准教授 (20401391)
大川 淳 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30251507)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 細胞移植 / 人工担体 / リハビリテーション |
研究概要 |
今年度は、ラットを用いた脊髄損傷モデルの作製行い、慢性期におけるリハビリテーション効果を解析した。血管クリップで脊髄を一定時間挟んで胸髄損傷を作製する。後肢運動機能評価法(BBBスコア)を損傷後から1週間ごとに測定する。知覚検査は、2週ごとに機械刺激とアセトン刺激をして足底刺激の強さと足ひっこめの時間を計測して評価を行った。最終観察時(4週間)には後肢フットプリントを行い歩幅を計測した。脊髄損傷後、6週間後にトレッドミル(ベルト式強制走行装置であり一定の運動負荷を行うことができる)群と水泳訓練(一定時間水泳および水中での歩行訓練を行う)群、訓練しない対照群の3群を作製して運動・知覚機能の回復を比較した。また、最終観察時に脊髄腰膨大からRNAを抽出してqPCR法を用いて神経栄養因子(BDNF、NT-3)の発現パターンを解析した。 脊髄損傷慢性期において、トレッドミル群では訓練開始4週で対照群と比較して有意にBBBスコアと歩幅の改善が認められ、水泳訓練群では知覚機能と後肢の足首の回旋において改善傾向があった。神経栄養因子の発現は、リハビリ開始後から発現が増加し、対照群と比較してBDNFは1.3倍、NT-3の発現は約3倍の発現を認めた。ただしトレッドミル群と水泳群に発現の差はなかった。 運動機能に関しては、トレッドミル群で改善が著しく荷重負荷をかけての歩行は損傷後の時期に関わらず効果があるといえる。また、慢性期においても脊髄レベルで神経栄養因子の増加を認めていることから改善に寄与しているものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の結果から慢性期ラット損傷脊髄に対するリハビリテーションの効果が明らかとなった。臨床的には、脊髄損傷から1年経過すると自主トレーニングが中心となってしまい徐々に機能が低下していく症例も散見される。しかし、本結果から慢性期に移行した場合でも積極的なリハビリによって運動機能の維持あるいは回復の可能性が示唆される。ただし、本効果が損傷下位の脊髄レベルでの神経栄養因子発現増強によるものと示唆されるが、作用機序の解明までには至っていない。また、細胞移植などの損傷脊髄に対する直接的な治療までは至っておらず次年度の課題となっている。今後、本研究を継続することで損傷脊髄慢性期でのリハビリと細胞移植等の組み合わせ治療によって機能回復が得られ、作用機序が徐々に解明されていくと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
神経機能回復のためには、神経細胞の活性化や神経突起の伸長、神経栄養因子やシナプス活性の増強など様々な因子が影響している。脊髄損傷慢性期リハビリテーションによってどの因子が最も刺激を受けるのか検討する必要がある。そのためには、下肢機能の中枢となる腰膨大部でのシナプトフィジンやPSD95といったシナプス蛋白の発現変化やBrdUを用いた神経細胞増殖活性の変化、神経トレーサーを用いた神経回路の可視化によって解析する必要がある。次年度において脊髄再生因子についてそれぞれ検討していく予定である。また、骨髄間葉系細胞(BMSC)移植や人工担体(ハニカムコラーゲン:HC)の組み合わせや脊髄組織の瘢痕を除去するコンドロイチナーゼ注射について、本年度では、予備実験のみであったので次年度に本実験を行い研究成果を積み上げていく予定である。このような治療方法に組み合わせによって脊髄損傷慢性期であっても運動・知覚機能の再獲得ができるように研究を推進していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラットおよび飼育、細胞培養、人工担体、組織切片作製・染色が必要である。 手術用ラットについては、年間で予備実験や予期せぬ死亡を含めると50~60匹程度必要となる。移植細胞を培養するためには、培養器具、培養液などが必要となる。ハニカムコラーゲン担体の購入も必要である。組織染色には、HE染色などの一般的な染色液のほかに神経細胞やグリア細胞それぞれに特異的に反応する抗体は解析に必要であり、同部位を可視化するには蛍光標識付きの二次抗体が必要である。 学会参加による情報収集を行い、適宜データがまとまった時点で学会発表を行う。
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