研究課題/領域番号 |
24592190
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
出村 諭 金沢大学, 大学病院, 講師 (00348228)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脊椎腫瘍 / 腫瘍脊椎骨全摘術 / 自家骨移植 / 自己脂肪由来幹細胞 / 骨癒合 / 脊柱再建 / 生物学的固定 / 骨欠損 |
研究概要 |
今回脊椎骨切除後の動物モデルに対し、自己脂肪由来幹細胞を用いた脊柱再建を行い、骨癒合に関する有効性を検証する実験を行った。 まず成犬を用い、全身麻酔下での背側正中切開後、チタンロッド及びスクリューによる脊椎固定を行った。その後、脊髄神経を温存しつつ第13胸椎の切除を行い、欠損部をチタンケージにて再建できる全摘術モデルを作成が可能であった。 次に背部の脂肪組織を4g採取し、組織破砕、コラゲナーゼ処置、フィルター、遠心分離を行うことで、幹細胞を含む間質細胞を得ることができた。これを切除した椎体の骨片に染み込ませ、フィブリン糊と混合しチタンケージに充填した。このチタンケージ骨欠損部に移植した。術後2週および4週に検体を摘出、Villanueva bone染色し、チタンケージごと正中矢状面の研磨切片を作製した。 術後2週モデルでは上下椎体に隣接した領域に、4週モデルではさらにケージ中央脊髄側に線維性組織の増生を認めた。線維性組織周辺では新生骨の形成、移植骨の吸収、血管の増生など、骨形成に関連する反応性変化を認めた。反応領域面積/ケージ内組織量の平均:脂肪幹細胞群2週27.5%、脂肪幹細胞群4週57.1%、コントロール群2週20.1%、コントロール群4週43.9%と各群4週で増加し、脂肪幹細胞群で反応領域が広い傾向を示した。各群反応領域内の骨形成量や骨吸収量に優位差は認められなかった。椎体隣接領域では新生骨/移植骨比:脂肪幹細胞群4週2.11、C群4週1.12と差を認め、組織像で脂肪幹細胞群4週の新生骨にlamellar構造を多く含む傾向があった。脊椎全摘術後の巨大欠損部への自己脂肪由来幹細胞投与により、血管を含む線維性組織が増加し、骨形成優位なリモデリングが誘導される可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成犬を用いた脊椎全摘モデルの作成、及び脂肪由来幹細胞の抽出、移植が実験的に可能であったため。また、術後4週でのチタンケージ内部の移植骨の組織評価を行い、移植骨周囲からの骨形成が確認されたため。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の実験において、術後4週での脊椎全摘モデルの評価は可能であり、脂肪幹細胞移植の骨形成に関する良好な結果が出ている。一方、術後8週以降の長期モデルにおいて、移植骨内の感染併発による骨癒合評価不能例も散見され、より注意深い無菌操作の徹底が必要と思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は効率的な予算執行により端数が生じ、5620円が未使用額となった。25年度は脊椎全摘モデルの作成、脂肪幹細胞の採取、移植に必要な実験動物の購入。動物実験用の麻酔薬(プロポフォール、ミタゾラム、ドルミカム等)、維持輸液生剤などの試薬や分子生物測定試薬 、病理切片作成、免疫組織化学染色、H-E染色、細胞の培養、分化誘導に必要な培養液やプラスチック製材の購入。また日本整形外科基礎学術集会、アメリカ整形外科学会の学会参加費、論文の校正及び投稿費に使用予定である。
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