研究課題/領域番号 |
24592190
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
出村 諭 金沢大学, 大学病院, 講師 (00348228)
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キーワード | 脊椎腫瘍 / 腫瘍脊椎骨全摘術 / 自家骨移植 / 自己脂肪由来幹細胞 / 骨癒合 / 脊柱再建 / 生物学的固定 / 骨欠損 |
研究概要 |
前年度に引き続き、脊椎骨切除後の動物モデルに対して自己脂肪由来幹細胞を用いた脊柱再建を行い、骨癒合に関する有効性を検証する実験を行った。 成犬に対し、全身麻酔下で脊髄神経を温存しつつ第13胸椎の切除を行い、欠損部をチタンケージにて再建できる全摘術モデルを作成した。椎体の再建時には第11、12胸椎および第1、2腰椎の椎体にスクリューを挿入し、チタンケージを上下椎体で挟んで圧迫固定を行った。6週以上の観察した場合、椎体骨折を生じやすいことがわかった。そこで骨折の原因と考えられる圧迫力の左右不均衡を対側に金属プレートとスクリューを用いることで、術後6週以上経過したモデルの作成が可能となった。 この脊椎全摘術を施行した動物モデルを、椎体再建のチタンケージ内に自家骨とフィブリン糊を充填したコントロール群と、抽出した幹細胞を含む組織を自家骨に染み込ませた脂肪幹細胞群に分け、それぞれ術後2週、4週で摘出した検体をVillanueva bone染色し、チタンケージごと正中矢状面の研磨切片を作製した。 完成した標本に対し、蛍光偏光顕微鏡下に骨形態計測を行った。その結果、骨形成が盛んに行われている上下椎体に接した領域において、類骨面に並ぶ骨芽細胞数が各週 脂肪幹細胞群で多く、2週モデルより4週モデルで多い傾向を示した。また、新生骨量に占める層板骨の割合では、2週の時点でコントロール群ではほとんど0であったのに対し、脂肪幹細胞群では21.6%の層板骨が形成されていた。これらの結果から、脂肪幹細胞を含ませることで成熟した骨構造である層板骨を早期から形成するようになる、すなわち骨形成を促進すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成犬を用いた脊椎全摘モデルを改良し、必要に応じて長期観察を可能としたため。また、術後2週、4週でのチタンケージ内部の移植骨の骨形態計測を行い、脂肪幹細胞による骨形成促進効果が確認されたため。
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今後の研究の推進方策 |
24~25年度の実験において、術後4週までの脊椎全摘モデルの評価は可能であり、脂肪幹細胞移植の骨形成に関する良好な結果が出ている。一方、手技の改良により、術後6週以降の長期モデルにおいて生じていた椎体骨折を抑制できるようになり、今後の必要性応じて長期モデルでの検討が可能となった。脂肪幹細胞の短期的な骨形成促進効果が長期的に最終的な骨癒合に対して影響するのか否かについて更なる検討が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は効率的な予算執行により端数が生じ、13411円が未使用額となった。 実験動物の購入、動物実験用の麻酔薬、病理切片作成、免疫組織化学染色、細胞の培養、分化誘導に必要な培養液やプラスチック製材の購入。また論文の校正及び投稿費、日本整形外科学術集会の学会参加費に使用予定である。
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