研究課題/領域番号 |
24592194
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
森 幹士 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (30467386)
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研究分担者 |
今井 晋二 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (90283556)
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キーワード | BDNF / 末梢神経障害 / 神経修復 |
研究概要 |
昨年度から行っているin vivoでの坐骨神経圧挫モデルマウスを用いた研究を継続しました.マウスの左坐骨神経を露出し脳血管クリップで60秒間圧挫することにより作成した坐骨神経圧挫モデルマウスを用いて、ロータロッドトレッドミルテストによる機能評価を行いました. 昨年度の研究では、電気生理学的な評価においては、BDNFが正常発現しているコントロール群はノックアウトマウス群と比較して有意な回復を示すことを確認できましたが、齧歯類での神経損傷後の機能回復が予想以上に高く、ロータロッドトレッドミルを用いた機能評価では、当初はBDNFが発現していないBDNFノックアウトマウスとBDNFが正常発現しているコントロールマウスとの間に有意な機能回復の差を見出すことが困難でありました.そこで、評価の時期などを調節するなどの対応をして、最終的にはBDNFノックアウトマウスでは坐骨神経損傷後の機能回復が、BDNFが正常発現しているコントロールマウスと比較して有意に遅れることを見出し、BDNFが末梢神経障害時の修復に重要な役割を果たしていることをさらに強く裏付けることができました. 一方、in vitro研究においては、現在発現が報告されているBDNFの9つのスプライスバリアントのうち、スブライスバリアント5のみが発現していることを其々のバリアントに特異的なプライマーを作成し、RT-PCR法を用いて突き止めました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目標は、in vitro研究では、現在報告されているBDNFの9つのスプライスバリアントのうちどのバリアントが発現しているのかを確認することであった.一方、in vivo研究では、ロータロッドトレッドミルテストによる機能評価と末梢神経障害局所へと動員された自家骨髄由来細胞が産生するBDNFの重要性との証明であった.In vitro研究はおおむね順調であり予定通りの研究成果が得られたが、in vivo研究においては予想以上にモデルマウスの神経損傷の回復能が高く、ロータロッドトレッドミルを用いた機能評価に時間を要した.このため、末梢神経障害局所へと動員された自家骨髄由来細胞が産生するBDNFの重要性との証明を次年度に行うこととなってしまい、研究全体の進捗状況としてはやや遅れをとっていると考えています.
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今後の研究の推進方策 |
現在報告されているBDNFの9つのスプライスバリアントのうちRT-PCR法を用いて発現が確認できたバリアント5の発現量をqRT-PCR法を用いての定量を予定しています.また、局所へと動員された自家骨髄由来細胞由来のBDNFの重要性の証明には、BDNFノックアウトマウスを用いて、骨髄細胞のみ正常なBDNFを産生することができるキメラマウスを作成しての実験を予定しています.BDNFノックアウトマウスと同様な手法により骨髄細胞のみ正常なBDNF産生能を持つキメラマウスを作成し、これまでと同様に坐骨神経圧挫モデルを作成し、自家骨髄細胞が産生するBDNFの末梢神経修復における重要性について検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
In vitro研究はおおむね順調であり予定通りの研究成果が得られましたが、in vivo研究においては予想以上にモデルマウスの神経損傷の回復能が高く、ロータロッドトレッドミルを用いた機能評価に時間を要しました.このため、末梢神経障害局所へと動員された自家骨髄由来細胞が産生するBDNFの重要性との証明を次年度に行うこととなってしまい、これらに必要な研究費を消費することができませんでした. RT-PCR法によるmRNA解析用に各種プライマーと、免疫組織化学染色法に必要なBDNFなどの抗体各種と関連試薬、実験用マウスなどを消耗品としての使用を予定しています. 本研究課題に分野的に近い研究の多くは、国内の日本再生医療学会のみならず米国末梢神経学会などで報告されます.これらの学会に参加し最先端の知見を収集するとともに我々の得た知見を発表するために、旅費としても一部使用を予定しています.
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