研究課題
椎間板ヘルニアの疼痛発症機序と疼痛の性質の内容は不明である。我々はヘルニア組織周辺の炎症が椎間板とマクロファージの相互作用に由来することを示してきた。マクロファージは椎間板変性全体に関わっている可能性が高く、椎間板ヘルニアのみならず、腰部脊柱管狭窄症の椎間板に於いてもマクロファージが存在している可能性が高い。我々はヒト変性椎間板サンプル (腰部脊柱管狭窄症32症例33椎間板、椎間板ヘルニア23症例23ヘルニア塊)の免疫組織染色から変性椎間板全体にマクロファージが存在することを証明し、その性質を調査し、単位面積あたりのマクロファージ数と腰椎MRIの変性度との相関を調査した。椎間板ヘルニアおよび非ヘルニア椎間板の両方にマクロファージは存在した。感染や腫瘍に際して炎症惹起や腫瘍排除を行うM1マクロファージと組織修復にあたるM2マクロファージの存在比を精査したところ、M1マクロファージが椎間板ヘルニアの95.6%、腰部脊柱管狭窄症の95.5%に存在し、両疾患ともにM1マクロファージが多く存在した。椎間板変性度とマクロファージ量の存在の相関はなかった。現在まで、変性椎間板研究は髄核細胞やマトリックスの研究が主体で、変性末期に至った椎間板性疼痛に対する治療方法は確立されていなかったが、マクロファージは椎間板変性のどの時期にも存在することから、今後、マクロファージに対する治療が椎間板変性の加療に応用できる可能性が高まった。
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J Orthop Res
巻: 32 ページ: 455-63
10.1002/jor.22533