研究課題/領域番号 |
24592196
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
前野 耕一郎 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70403269)
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研究分担者 |
西田 康太郎 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (00379372)
角谷 賢一朗 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10533739)
土井田 稔 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 医学研究員 (60237170)
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キーワード | 椎間板 / 変性 / 創外固定型モデル / 脊索由来細胞 |
研究概要 |
研究実施計画では、H25年度以降にTransposagen社からFas ligand(FasL)ノックアウトラットを購入して同ラットの解剖学的・組織学的評価を行うとともに、椎間板髄核細胞を採取してマクロファージとの共培養実験を行う予定であった。しかしながらノックアウトラット購入後の検疫に大幅に日数を必要とするため、実験時のラット週齡が本来行うべき実験週齡から大きく離れてしまう問題が発生した。椎間板変性の実験では、老化による椎間板変性の問題を除去するためにラット週齡は極めて重要な問題であるため残念ながらこれを断念した。そこで、これも研究実施計画に基づいて、ヒト椎間板髄核細胞の不死化細胞株の内在性FasL遺伝子発現をRNA 干渉によって抑制する実験の検討を行った。しかしながら、FasLに対するsiRNA設計の信頼度が極めて低い結果となった。siRNAの購入による実験の継続も試みたが、やはりこれも信頼度が低く、結果的にFasL遺伝子のノックダウンそのもを断念せざるを得ない結果となった。以上の理由によりFasL関連の実験を継続実施することが困難となっため、本研究の根幹である、「椎間板変性」に視点を戻し、我々が以前に確立した創外固定型椎間板圧迫モデルによる椎間板変性のメカニズムの解析を進めることとした。そこでまず正常のSprague Dawleyラット尾椎に創外固定器を装着させて椎間板を圧迫し、圧迫期間を1日、3日、7日、14日、56日でそれぞれ解除することにより様々な椎間板変性を呈するモデルを作成した。その結果、圧迫期間が異なることでX線やMRIによる椎間板変性の程度も明らかなに異なり、特に1日の圧迫と7日以上の圧迫では異化遺伝子と同化遺伝子の同行にも変化が出現すること明らかとなった。またラットでは脊索由来細胞と呼ばれる胎生期細胞の消失が椎間板変性の契機となる重要な変化であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は「椎間板変性に由来する疼痛発生メカニズムの解明」である。平成25年度まで当初の研究計画通りにin vitro実験を進め、そこで得られた結果をまとめて学会発表や論文作成を行った。以上より一定の成果をあげているものと判断している。しかしながらH25年度以降の研究計画であった、Transposagen社からのFasLノックアウトラットの購入による動物実験、あるいはヒト椎間板髄核細胞不死化細胞株における内在性FasL遺伝子発現のノックダウンについては、ラットの週齡の問題や遺伝子操作の技術的な問題から断念せざるをえなくなった。以上より、当初の実験計画による「研究の目的」の達成度は遅れていると言わざるを得ない。しかし一方で、我々が現在までに確立してきた創外固定型椎間板圧迫モデルを用い、異なる手法によって椎間板変性のメカニズムの解析を進めることで新たな結果を獲得していることもあり、総合的には「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述の様に、Transposagen社からのFasLノックアウトラットの購入による動物実験、あるいはヒト椎間板髄核細胞不死化細胞株における内在性FasL遺伝子発現のノックダウンについては、ラットの週齡の問題や遺伝子操作の技術的な問題から今のところ継続することが困難と言わざるを得ない。引き続きTransposagen社や我々の動物実験施設との交渉を進めることで、ノックアウトラット購入・実験遂行の可能性を探す予定であるが、困難場合は現在進めている正常Sprague Dawleyラット尾椎の創外固定型椎間板圧迫モデルによる椎間板変性のメカニズムの解析をさらに進める予定である。現段階では7日間のラット尾椎椎間板圧迫により、マトリックスメタロプロティナーゼ-3(MMP-3)などの炎症性蛋白分解酵素の上昇が確認されており、この事実を基盤として「椎間板変性に由来する疼痛発生メカニズムの解明」を進めて行く予定としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、前年度使用計画額にTransposagen社からのFasLノックアウトラットの購入による動物実験が含まれていた。しかしながら検閲などの問題によりラット購入が困難となり購入そのものを見合わせたため、購入予定分の金額を主体として次年度使用額が生じている。 前述の様に本研究は「椎間板変性」を基盤としているため、FasLノックアウトラットの実験には老化因子を除去するためにラットの週齡の統一が極めて重要である。現段階では一定週齡のノックアウトラット購入が困難な状況であるが、引き続きTransposagen社および当該動物実験施設とラット購入・実験遂行の交渉を進め、ノックアウトの購入が可能であれば、本年度に当該実験を行いたいと考えている。ただしノックアウトラットの実験が困難な場合には、創外固定型ラット尾椎椎間板圧迫モデルや、ラット尾椎の間欠的圧迫により組織培養が可能な間欠圧迫型ラット尾椎椎間板圧迫モデルを用いて作成した変性椎間板を使用し、これらをWestern blottingやPCR法により解析することでタンパク、RNAレベルでの遺伝子動向を解析する予定である。これにより「椎間板変性に由来する疼痛や炎症発生のメカニズム」を遺伝子レベルで解明したいと考えている。
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