研究課題/領域番号 |
24592212
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中井 知子 東海大学, 医学部, 特定研究員 (20624589)
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キーワード | 線維輪細胞 / 表面マーカー / ソーティング / CD146 / 細胞骨格 / コラーゲン繊維 / 配向 / フレキシブル |
研究概要 |
変性椎間板への細胞移植療法の細胞資源として、線維輪由来の培養細胞を利用するため、本研究ではマウス線維輪由来培養細胞中に再生力に富む前駆細胞が存在すると仮定し、表面マーカーによりその分離同定を試みる。三年間の研究計画からなる二年次の実績としては、C57BL/6マウス尾椎線維輪由来細胞を培養し、細胞表面マーカーを解析した結果、CD146タンパク(以下CD146)が線維輪にとって重要な役割を果たしていることが判明し、第28回日本整形外科学会基礎学術集会で口頭発表をおこなった。 具体的には、CD146発現の有無で細胞のソーティングを実施し、得られた二群の細胞の性質を遺伝子発現、免疫染色によるタンパク発現に基づいて比較したところ、CD146陽性細胞は、これまで知られていた軟骨や髄核の細胞と共通の細胞外基質を生産する一方で、よりフレキシブルな組織構造を構築するための細胞骨格形成やコラーゲン繊維の配向の制御に関わる因子であることが示唆された。 さらに、培養液に添加する増殖因子を調節することで、線維輪細胞に効率的にCD146発現を増加させる方法を発見し、通常培養との比較から、CD146発現に至る前の前駆細胞のマーカーについても有力な手掛かりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線維輪前駆細胞のマーカーを探し、前駆細胞を採取して椎間板再生への応用を試みるのが目的であるが、現段階で線維輪固有の形質発現と関わりを持つマーカー、すなわち分化マーカーを発見した。これらの分化型細胞の元になる、より未分化な細胞が前駆細胞と考えられるが、分化マーカー発現前後の他のマーカー変動についてもデータを取り続けてきたため、目指す前駆細胞を特定するマーカーについても有力なヒントを得ており、目的に近づいてきたと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まずCD146が線維輪にとって重要なマーカーであることを実証し論文発表するために、これまでに得られたデータに加えて機能との関連を裏付けるデータを得る実験を行う。コラーゲンゲル内にCD146発現の有無でソートした細胞を別々に同一の密度で播種し、より生体内の環境に近い三次元培養を行い差異を調査する。 さらにCD146陽性細胞の前駆細胞についても調査を続け、動物への移植実験への準備を行う。その際、分化した細胞のマーカーであるCD146陽性で細胞を選ぶのか、その前段階の前駆細胞を、想定されるマーカーで選ぶのか、どちらが有利であるのかも合わせて検討し移植を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の成果を発表しようと計画していたので、論文投稿準備として英文校正費用、および論文が受理された場合の掲載諸経費等を用意していたが、実験を繰り返して結果を確認するのに時間がかかり、論文原稿作成に至らなかったため。 当該年度に得られたデータは既に統計的有意差も確認できているので、論文原稿をまとめ次年度中に投稿する予定である。そのための英文校正、掲載諸費用に充てる計画である。
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