研究実績の概要 |
【目的と実施計画】線維輪(AF)は椎間板の構造と耐荷重性の維持に不可欠であり椎間板変性における修復は重要な課題である.本研究では細胞移植を目的として,マウス尾椎AF培養細胞に発現する間葉系幹細胞マーカーであるCD146に着目し組織再生能を検討した.8週齢のC57BL/6マウス尾椎AF組織由来の細胞を3週培養し以下の実験を行った.①間葉系三系統への分化誘導,②Transforming growth factor β-1(TGFβ-1), Insulinlike growth factor-1(IGF-1)の効果,③ソーティングで得たCD146+,CD146-におけるmRNAをリアルタイムPCR法,タンパク発現を蛍光抗体法により検討.④コラーゲンゲル内でのGel Contraction Assay,⑤AF組織切片を免疫染色しCD146+細胞の局在を調査. 【結果と考察】①未ソートのAF培養細胞は骨,軟骨,脂肪の三系統への多分化能を示したが, CD146-は骨・軟骨へ,CD146+は骨への分化を示した.②CD146発現はTGFβ-1,R3-IGF1の添加により増加した(3.43倍,P<0.05).③ CD146+群において平滑筋(SM)22αmRNA発現が陰性群に対し2.3倍(P<0.05)と高く,蛍光抗体法でもCD146+群にてSM22α,直線状のF-アクチンの発達や,広範なタイプIコラーゲン分布が見られた.④ Gel Contraction Assayの結果,CD146+はCD146-に比してゲル表面積が75%(P<0.05)と強い収縮能を示した.⑤組織染色ではCD146+細胞はAF組織再外層に局在を認めた. 【結語】CD146分子はSM22αやF-アクチンを介した形質発現に寄与し,コラーゲンゲル内で高い収縮能を示す最外層AF細胞のマーカーであると判明した.
|