研究実績の概要 |
【目的】我々はC57BL/6マウス尾椎線維輪由来の細胞培養法を確立し、様々な臓器由来の間葉系幹細胞のマーカーのひとつであるCD146発現に着目し、分化との関連を検討した。【方法】10匹の8~9週齢のC57BL/6マウス尾椎椎間板より、実態顕微鏡下に線維輪組織を採取し、酵素処理で得られた細胞を10%FBS含有αMEM培地にて培養、酸素濃度を2%, 20%と設定し、細胞増殖とCD146発現を比較した。マウス線維輪培養細胞(mAF)の多分化能を調べるため、骨、軟骨、脂肪の三系統への分化誘導を行い、所定の染色法により評価を行った。また、CD146発現を増加させる因子についても調査し、CD146陽性、陰性で細胞をソートし、得られたCD146(+)mAF, CD146(-)mAFの二集団についても間葉系の多分化能を評価した。【結果】mAFは2%酸素下で20%酸素下に比べて8.6倍(N=3)の増殖を示し、CD146陽性率は同じく2%酸素下で4.7倍(N=3)の高値を示した。CD146の陽性率はTGFβ-1、R3-IGF1を含有する培地で3日間単層培養することにより、6.4%から38.1% と約6倍(N=2)増大した。全mAFは骨、軟骨、脂肪の三系統への多分化能を示したが、CD146(+)mAF, CD146(-)mAFはいずれも、骨、軟骨の二方向のみで脂肪への分化能は欠如していた。軟骨方向への3D培養において、CD146(-)mAFでは、軟骨様ペレットが形成されたが、CD146(+)mAF,では、ペレット内部に、免疫染色にてタイプI、およびタイプIIコラーゲン陽性を示す直線状の構造体が形成された。【結論】mAFは培養系で間葉系三系統の多分化能を示したが、CD146表面マーカーは、低酸素、TGFβ-1、R3-IGF1刺激に応じて増大し、線維輪様形態構築に関わる分化の指標であると考えられた。
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