研究課題/領域番号 |
24592214
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
遠藤 健司 東京医科大学, 医学部, 講師 (90266479)
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研究分担者 |
山本 謙吾 東京医科大学, 医学部, 教授 (10246316)
澤地 恭昇 東京医科大学, 医学部, ポストドクター (20571152)
鈴木 秀和 東京医科大学, 医学部, 講師 (40317871)
小坂 泰一 東京医科大学, 医学部, 講師 (10328213)
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キーワード | 腰痛 / 椎間板変性 / 神経侵入 / 神経成長因子 / MMP / NSAIDs / prostaglandin |
研究概要 |
近年,椎間板性腰痛発症の分子機構として,椎間板の変性に伴い疼痛伝達をする神経線維が椎間板内側に侵入し,さらに疼痛感作が行われることが慢性腰痛の病態の1つであることが明らかになってきている.本研究は,椎間板変性を背景とした慢性腰痛に対する非ステロイド性抗炎症薬であるNSAIDsの細胞外基質分解酵素(MMPs)および神経成長因子(NGF)の遺伝子発現調節に対する効果を明らかにし,慢性腰痛予防,慢性腰痛に対する薬学的治療の可能性を探索ことを目的とし検討を行っている. 前年度までに,ヒト椎間板細胞において,IL-1により誘導されるNGFおよびMMPsの発現がステロイド(dexamethason)により強力に抑制されたのに対し,選択的COX-2阻害剤はむしろこれら遺伝子発現を増強させることを明らかにしてきた.また選択的COX-2阻害剤による発現増強がPGE2の添加により回復されたことから,PGE2はnegative feedback様にNGFおよびMMPsを制御していることが判明した. 昨年度は,PGE2によるこれら遺伝子の発現抑制機構を探るべく,PGE2受容体であるEP1-4の発現および機能について,それぞれの受容体に対する選択的アゴニストを用いて検討を行った.その結果,PGE2によるMMPs発現調節はEP1を介すること,NGFの発現調節はEP2およびEP4を介することが明らかとなった. これら基礎的研究成果は,現在臨床で汎用される選択的COX-2阻害剤による腰痛保存治療が,PGE2産生を抑制し炎症および急性疼痛を緩和する一方で,慢性腰痛に関連するMMPsによる組織変性およびNGFによる神経進入,疼痛感作を増悪させる可能性が示唆された.本研究によるMMPsおよびNGF発現調節の理解は,慢性腰痛の予防および薬物的治療につながる重要な研究であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,PGE2によるNGFおよびMMPs発現抑制機構について,PGE2受容体であるEP1-EP4の同定を予定どおり完了した. さらに,PGE2と受容体を共有し,腰痛治療に用いられるPGE1およびその誘導体のNGFおよびMMPs発現に対する効果についても検討を行い,PGE1の新規薬理効果の発見へと発展した.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの研究結果に基づき,PGE2受容体下流の細胞内情報伝達経路についての解明を行う. また,炎症で活性化されるMAP kinasesやNFkB等の細胞内情報伝達経路に対するPGE2の効果についても検討を行う予定である. 今年度は,本研究課題の最終年度であり,専門誌への投稿,国内外学会での発表を行い,研究成果を広く発信しいきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は,効率よく研究を遂行することができ,予定よりも消耗品等の支出が少なかったため. 次年度は,主に細胞内情報伝達の解析を行うため,各種リン酸か抗体,siRNA,Bio-plex等,比較的高価であるが本研究目的を効率よく遂行する上で有用な消耗品を購入する予定である. また,次年度は本研究の最終年度であり,本研究成果を広く発信すべく,国内外学会で発表および専門誌への論文作成費として使用する予定である.
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