研究課題/領域番号 |
24592217
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
酒井 義人 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 先端診療部, 脊椎外科医長 (70378107)
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研究分担者 |
近藤 和泉 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 機能回復診療部, 部長 (50215448)
原田 敦 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 病院, 副院長 (80198910)
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キーワード | 脊椎脊髄病学 / 腰痛 / サルコペニア |
研究概要 |
高齢者の筋肉減少症(サルコペニア)に対する発症機序解明が研究されているが、現在最も利用されているDXA法では内臓重量の影響を受けない四肢除脂肪量での評価のため、体幹筋量は正確に評価できない。本研究では、高齢者における体幹筋量を正確に把握し、体幹筋機能との関連を評価することにより腰椎疾患における体幹筋量増強が四肢同様、高齢者運動機能改善の一助となるか検討することを目的としている。平成25年度においては体幹筋量の減少と体幹筋機能との関連を解析した。65歳以上の腰椎変性疾患患者233例のDXA法による四肢筋量およびMRIでの面積での体幹筋量と腰痛との関連の調査では、腰痛と四肢筋量の減少が有意に認められ、特に下肢筋量と腰痛の関連が明白であった。体幹筋では腰椎高位(L1/2高位)での脊柱起立筋(グローバル筋)が腰痛で筋量が少ない他は、下位腰椎での体幹筋、特に多裂筋(ローカル筋)はサルコペニア患者でも減少しておらず、腰痛との関連も認めなかった。腰椎変性疾患後方手術後1年での四肢及び体幹の筋量を170例で縦断的に評価したところ、四肢筋量は有意に減少、多裂筋は手術の影響を受け有意な減少を示したが、脊柱起立筋は有意な減少を認めなかった。手術による多裂筋の減少は腰痛やADL改善に影響を与えておらず、四肢筋量の加齢によると考えられる減少が腰痛とADLの改善に影響していた。Type II線維の萎縮を主とするサルコペニアはその筋組成から、体幹よりも四肢に起こりやすく、腰痛の発生においても少なからず影響を与えていることが予測され、腰痛は四肢筋量が減少し、体幹筋減少が発生する以前に出現することが考えられ、サルコペニアの予防が腰痛予防につながる可能性が指摘できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体幹筋の2次元での評価は画像解析で進行している。現在233例のデータ収集と解析が終了し、高位別の体幹筋量の評価で腰痛との関連を確認した。すなわちL1/2高位での脊柱起立筋の加齢性萎縮が影響している可能性がある。四肢筋量減少と腰痛との関連と併せて考えると、体幹筋量減少よりも以前に腰痛が起こっている可能性が考えられる。また平成24年度の解析でサルコペニアと関連のある体幹筋減少はL4/5高位での脊柱起立筋であったことから、多裂筋と比べてtype II線維の多い組成である脊柱起立筋が四肢筋量減少に引き続いて起こっていることが予測される。この体幹筋の萎縮が高齢者のADL低下と関連していると考えられ、サルコペニアの予防が腰痛に加え、高齢者の生活動作の向上に影響を与える可能性を示唆できた。3次元の解析は211例の画像解析を終えている。画像解析における技術的な難易度は低くないが、腰部における全体の体幹筋量の評価が可能となっている。また3次元解析の際に、含まれる筋量の中に筋組織と加齢に伴う筋内脂肪以外の統計学的に有意な信号変化が存在することが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
四肢筋量減少に加え、体幹筋の減少を伴うと高齢者のADLに多大な影響を及ぼすという2次元的解析の結果が、3次元的な筋量解析ではどうかを評価する必要がある。現在進めている3次元的筋量評価で体幹筋萎縮と腰痛および高齢者ADLとの関連を評価する。最終年では3次元解析を300例程度にまで増やし筋機能、ADLとの関連を統計解析にかける。また筋内における脂肪貯留とサルコペニア、筋障害との関連が指摘されているが、MRIにおける画像解析で筋組織と脂肪組織の信号変化以外にそれらの中間信号領域なるものが統計学的に存在することが確認された。新たな知見となる可能性があり、さらに解析をすすめ、これが前脂肪化状態であるかどうかの確認を四肢筋における脂肪量のデータと照合して確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度にむけて解析数を増やすため、3次元的画像解析や体幹筋計測、データ入力などを行うための人件費・謝金が必要な為。 主に、謝金を用いて画像解析専門家による体幹筋堆積計測を行うために使用する。その他、研究データ入力作業のための人件費に使用する。
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