研究課題/領域番号 |
24592222
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武冨 修治 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70570018)
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研究分担者 |
緒方 直史 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10361495)
筑田 博隆 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30345219)
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30456107)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Adam17 / 変形性関節症 / Notchシグナル |
研究概要 |
変形性関節症におけるNotch関連分子の発現パターンをマウス関節軟骨細胞にて測定したところ、Notchシグナルの上流に位置するAdam10,17は強く発現していた。さらに、軟骨分化誘導細胞株であるATDC5に対して、siRNAをもちいてこれらの遺伝子をノックアウトしたところ、分化誘導過程においての後期分化マーカーであるMmp13、Col10a1などの発現が抑制されるようになり、これらの遺伝子が後期分化に対して影響を与えうる事が予想された。また、細胞染色においてもATDC5の石灰化が抑制されている傾向が見られた。これらは、既知の因子であるNotchシグナルの中流に位置するRbpjに対する我々の先行研究の結果と相同した結果となった(Y.Hosaka et al. PNAS 2013 Jan 29;110(5):1875-80)。以上の結果から、慶応大学との共同研究のために入手したAdam17-floxマウスをタモキシフェン誘導性Col2a1-Creマウスと交配する事により、正常な成長後にAdam17をタモキシフェン投与下にノックアウトするマウスを作成、これらのマウスに対して変形性膝関節症マウスを外科的に作成し、解析を行った。現在のところまだマウスの数が少ないが、ノックアウトマウスはコントロールのfloxマウスと比較して、変形性関節症が抑制されている傾向が見られた。Adam10については、供与に向けて現在慶應大学と協議中である。Adam17の阻害により、変形性関節症を抑制できたという結果が得られた。Adam17が酵素であるというところから、その阻害を実際に行う事は選択的阻害薬等の作成により可能である。Adam17は変形性関節症に対する有望な治療ターゲットであるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Adam17のノックアウトマウスに変形性関節症に対する抵抗性が見られた。転写因子や転写共益因子に対する実際の治療介入は困難である事が多いが、酵素であるAdam17に対する阻害等の治療介入は選択的agonist等の作成により比較的容易であると考えられる。治療ターゲットとして有望な因子を発見し得たという事は本研究が順調に進展しているという根拠足りうる。
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今後の研究の推進方策 |
Taceについてその阻害方法の検討に入る。阻害剤については、研究協力先である疾患生命工学センターの所有する低分子化合物ライブラリーを用いてヒット化合物の検索を行い、投与方法としてはミセルなどの核酸医薬の最新の知見を用いたDDSも含め検討を行う。有効かつ細胞毒性等の副作用が少ない投与量を検討し、in vivo での検証に向けた最適化を行う。そして最適と考えられた治療法をin vivoで検証する。低分子化合物や抗体、阻害剤、核酸ミセルなどをOAモデルマウスの膝関節内に投与して、その予防効果などを検討する。評価においては組織学的評価、mRNAなどを用いた各マーカーの定量的評価を行う。特に切断酵素群は前述の通り他の重要シグナル経路についても作用している事が知られており、関節軟骨以外の臓器に与える影響も調べる必要があることから、重要臓器については一通り組織学的評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に阻害剤の基礎検討およびそのデリバリー法の検討に使用する予定である。in vitroの検討が終わり次第、マウスの膝関節内に投与、あるいは経口投与等の方法を用いてその効果並びに副作用を検討する。研究費はin vitroの細胞染色やその遺伝子の発現パターン確認のためのリアルタイムPCRの試薬、ならびに実験要動物の購入、飼育などに使用する予定である。
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