研究課題/領域番号 |
24592224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
柳下 和慶 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (10359672)
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研究分担者 |
榎本 光裕 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任講師 (90451971)
加藤 剛 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (80447490)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高気圧酸素 / 筋損傷 / 筋再生 |
研究概要 |
初年度は、安定した筋損傷モデルである薬剤性筋損傷モデルラットを作製し、高気圧酸素治療(HBO)の有効性を評価した。このモデルは筋衛星細胞の減少が生じるため、筋損傷過程が著しく遅延することが報告されている。 ラット前脛骨筋(TA)両側にカルジオトキシンを使用して薬剤性筋損傷を作製し、経時的に損傷筋を摘出して湿重量を計測した。また、損傷筋組織評価を行い、筋衛星細胞数の変化を解析した。損傷ラットは、治療なし(NT)群、HBO群の二群に分け、HBO 群には動物用チャンバーを用いて、2.5気圧、100%酸素にて120分間のHBO治療を、5日間連続で2週間行った。損傷後1,3,5,8,15日目に損傷筋を摘出した。経時的にHE染色による再生筋線維面積の計測と免疫染色法を用いた筋再生調節因子(Pax7、MyoD)の発現を解析とした。その結果、TAの筋湿重量は損傷後1日目においてHBO群がNT群に比べ有意に低値であった。さらにHBO群では、損傷後5、8日目で再生筋線維面積およびMyoD陽性細胞数の有意な増大を認めた。本筋損傷モデルでは、HBO治療によって早期の浮腫軽減と損傷筋の早期回復効果が組織学的に確かめられた。またその一因がHBOによる筋衛星細胞の分化促進作用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的には、筋挫傷患者においてHBOによって疼痛が軽減して早期に復帰することが明らかになっているが、詳細なHBOの機序について報告されていない。初年度においてHBOによる損傷回復促進と骨格筋衛星細胞への影響が明らかとなった。過去の報告で明確に示した論文がないことからおおむね順調に進展していると考えている。ただし、圧力と酸素の関係を明らかにするためにも加圧のない酸素暴露のみ群と加圧のみの群に分けて比較する必要があり次年度の課題となっている。また、HBOの効果を定量的に示すためには筋張力の評価が必須と考えているが、今年度では実験装置の条件設定に時間がかかり具体的な評価ができなかった。よって次年度の課題となっている。さらに筋再生における調節因子は複数あるため分子生物学的および組織学的に解析を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
骨格筋衛星細胞の増殖・分化に各種栄養因子が与える影響を比較し、HBOの作用機序を明らかにしていく。具体的には、HBOが筋損傷回復・再生時に関わるHGF、FGF2、IGF-1、などの栄養因子やVEGFなどの血管増殖因子等の発現パターンを解析する。さらにこれら因子と筋衛星細胞の増殖・分化促進との関係性を明らかにし、筋張力の定量化によってHBOの有効性をより明らかにする。また、HBOの治療プログラムを振り分けた解析を行い、骨格筋外傷に対する適切な治療プログラムを探る。当初の研究計画にあるように打撲性筋損傷モデルラットの作製についても進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験用ラット購入、飼育が研究費使用の中心となる。年間で予備実験や予期せぬ死亡を含めると100匹程度必要となる。また、高気圧チャンバーのメンテナンス費用や酸素使用、購入が必要となる。組織染色には、HE染色などの一般的な染色液のほかに筋細胞や筋衛星細胞それぞれに特異的に反応する抗体が解析に必要であり、同部位を可視化するには蛍光標識付きの二次抗体が必要である。 学会参加による情報収集を行い、適宜データがまとまった時点で学会発表を行う予定である。
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