研究課題/領域番号 |
24592228
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林 正徳 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (20624703)
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研究分担者 |
中村 幸男 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00549488)
内山 茂晴 信州大学, 医学部, 准教授 (10242679)
加藤 博之 信州大学, 医学部, 教授 (40204490)
植村 一貴 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (50624706)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腱鞘炎 / 老化 / 糖尿病 |
研究概要 |
平成24年度は,糖尿病および老化モデルマウスにおける腱とその周辺組織の組織学的解析と腱組織における各種マーカーの定量を行った. 15週齢の糖尿病モデルマウス(db/dbマウス),および8週齢の老化モデルマウス(SAMP6マウス)の後肢の横断面の標本を作成.HE染色にて腱およびその周辺組織を観察し,それぞれのコントロールマウスと比較した.しかし,どちらのモデルマウスにおいても,明らかな組織学的な変化は確認できなかったため,糖尿病モデルマウスマウスについては20週齢,老化モデルマウスについては12,16週齢を追加し同様の観察を行ったところ,これらについても明らかな組織学的な変化は認められなかった. 当初は本実験に引き続き免疫染色を行う予定であったが,いずれのモデルマウスにおいても明らかな組織学的変化が認められなかったため,平成25年度以降に行う予定であった遺伝子発現解析を先行させ,同解析により変化が認められた遺伝子について再度組織学的に解析を行うという方針に変更した. 15,20週齢のdb/dbマウス各10匹.8,12,16週齢のSAMP6マウス各10匹の後肢第2~4趾より長趾屈筋腱を採取,リアルタイムRCRにより各種マーカーとルブリシンの発現を定量し,コントロールマウスと比較した.その結果,16週齢のSAMP6において腱細胞のマーカーであるTenomodulinが有意に増加している事が確認された.また,Tenomodulin は血管新生の抑制因子である事から,血管新生を促進する増殖因子であるVEGFや血管内皮細胞のマーカーであるCD31についても定量を行ったところ,逆に有意に低下している事が判明した.ルブリシンについては現在解析中であるが,予備実験においては,腱組織自体からの発現は既に確認されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は組織学的解析の結果を基に変化を認めた組織の特異的マーカーに対する免疫染色を行い,組織の性状をさらに詳細に調べる予定であったが,いずれのモデルマウスにおいてもルブリシンノックアウトマウスで観察されたような変化が認められなかったため,変化が最も予想される屈筋腱の遺伝子発現解析を優先的に行い,そこで変化を認めた遺伝子に対して改めて組織内での発現の状態や発現部位について解析を行うという方針に変更した.そのため免疫組織化学的手法による組織の解析については,予定より遅れた形となってしまった. また,遺伝子発現解析においては,マウスの長趾屈筋腱が微小であることから,同組織からのRNA抽出とリアルタイムPCRの条件の最適化にかなりの時間を費やしてしまった事も研究が遅れた原因となってしまった.また,屈筋腱の単独での採取は比較的容易であったが,滑膜については周辺の組織との境界が不明瞭で純粋な組織としての採取が困難であったため,結果の信頼性に影響することが予想され,顕微鏡下での採取は断念した.これについては,現在,組織切片からのマイクロダイセクションによるRNAの採取が可能かどうかについて予備実験を行っている. 現時点で得られている,16週齢の老化モデルマウスの長趾屈筋腱におけるTenomodulinの発現上昇とVEGF, CD31の発現減少という結果については,これまでに同様の報告は無く,また,それぞれの蛋白の機能面においては過去の報告と矛盾しないことから,これまで不明であった腱の老化のメカニズムを説明する上で重要な結果となる可能性がある.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度から26年度にかけては,まず現在行っている遺伝子発現解析をできる限り早期に終了させ,その結果を基に解析を進める遺伝子の絞り込みを行う. 続いて,変化を認めた遺伝子の組織内での局在や発現の状態を免疫組織化学的手法またはin situ hybridizationにより解析する.特に,老化モデルマウスで認められたTenomodulinとVEGF, CD31の変化については,組織学的解析を重点的に行い,腱の老化や腱鞘炎との関連性を詳細に調べる.また,これらの因子と新たに変化が認められた遺伝子との関連が予想される場合には,随時必要な実験を追加し検討を行う.ルブリシンについても,腱組織内での発現量の比較を各週齢のモデルマウスで行い,変化が認められたモデルマウスにおいては,組織内での発現の局在を他の遺伝子と同様の手法により解析する. 既にコントロールとの差が認められた老化モデルマウスについては,腱組織由来幹細胞の性質の変化について検討を行う.具体的には,腱組織から幹細胞を採取,培養を行い,幹細胞および腱細胞マーカーの定量,増殖能およびコロニー形成能や多分化能の比較を行う.さらに,同モデルマウスにおいてルブリシンの発現量に差が認められた場合には,ルブリシンの発現量の変化が幹細胞の増殖や分化に与える影響についても調べる. 上記の実験により得られた結果は,日本整形外科学基礎学会ならびに米国のOrthopaedic Research Society(ORS)において発表、さらに英論文として国際学術雑誌に投稿する.
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次年度の研究費の使用計画 |
RNA抽出用試薬,cDNA合成用キット,各種プライマー,リアルタイムRCR用キット,cDNA増幅キット,免疫染色用各種抗体,免疫染色用各種試薬,免疫染色キット,免疫染色用器具,PCR酵素,サブクローニング用各種酵素,コンピテントセル,LB培地,合成蛋白,各種チューブ類,スライドグラス,各種ピペット,各種チップなどの生化学実験用器具,試薬に計40万円.マイクロアレイ委託費に40万円.実験用動物に20万円.年間の動物実験飼育管理料に5万円.国内学会参加費に5万円.合計110万円を使用予定.
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