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2012 年度 実施状況報告書

悪性軟部腫瘍に対する新たな分子標的治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24592229
研究種目

基盤研究(C)

研究機関岐阜大学

研究代表者

大野 貴敏  岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60281052)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード明細胞肉腫 / 融合遺伝子 / EWS/ATF1 / Fos
研究概要

我々は特異的な染色体転座を持つ明細胞肉腫に注目し、染色体転座の結果生じる融合遺伝子EWS/ATF1(明細胞肉腫)の機能解析を行ってきた。EWS/ATF1融合蛋白は異常な転写活性をもつ転写因子として働き、細胞増殖や癌化に強く関与していることを明らかにした。さらに融合遺伝子EWS/ATF1を強制発現させることが出来るEWS/ATF1-inducibleマウスの作成に成功し、EWS/ATF1を強制発現させたマウスの全てにおいて約3カ月の短期間で軟部組織に明細胞肉腫様の肉腫が発生することを見出した。加えて、モデルマウスに発生した腫瘍、ヒト明細胞肉腫細胞株および手術切除標本において、FOS(proto-oncogene)が過剰発現していることを発見した。しかも、mRNAレベルでの発現量は正常細胞や他の肉腫の10~800倍と高値であった。
これらの知見をふまえ、明細胞肉腫におけるFOSの過剰発現のメカニズムの解析を行った。まず、EWS/ATF1発現誘導マウスに発生した腫瘍におけるEWS/ATF1とFosの発現量を評価し、ルシフェラーゼレポーターアッセイを用いてEWS/ATF1によるFos のプロモーター活性を評価した。さらにクロマチン免疫沈降法にてFosのプロモーター領域へのEWS/ATF1の直接的結合の有無を評価した。その結果、FOSの発現がEWS/ATF1の発現量に比例することを見出した。またFosのプロモーター解析にて,EWS/ATF1がFosプロモーター上のcAMP-resposive element (CRE)に直接結合してFosの転写を活性化していることが判明した。
さらに、マウスおよびヒト明細胞肉腫の培養細胞において、RNA干渉によりFOSのノックダウンを行ったところ、細胞増殖活性、トランスフォーメーション能が低下した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定通り、明細胞肉腫におけるFOSの過剰発現のメカニズムを解明することができた。さらに、FOSの発現を抑制することで、腫瘍増殖が抑制されることをin vitroで示すことができた。これらの成果は、明細胞肉腫の分子標的治療を推進する上で、極めて有益と考える。

今後の研究の推進方策

今後は、FOSをターゲットにした分子標的治療を目指した研究を推進する。
現在FOSのinhibitor(T5224)が関節リウマチの治療薬として開発されている。関節リウマチではFOSの過剰発現がその病態に大きく関与している。このT5524は過剰発現したFOSがターゲット遺伝子のプロモーターに結合するのを特異的に阻害し、その結果FOSの機能が抑制されてリウマチの病態が改善させる。T5224はすでに治験段階に進んでおり、臨床応用の実現化が期待されている薬剤である。FOS inhibitor開発者らと共同して、FOS阻害剤をEWS/ATF1-inducibleマウスに投与し、治療効果を検討する予定である。

次年度の研究費の使用計画

当初の予定通り、以下の消耗品を購入する予定である。
Vivo 試薬(inhibitor含む)1,200,000円、 動物管理費用(餌代含む)300,000円、
生化学実験試薬 100,000円、生化学実験器具 100,000円、細胞培養試薬 200,000円、
細胞培養器具 100,000円
研究成果発表のための旅費に200,000円使用する予定である。また、前年度からの繰越金が1,111,249円生じたが、実験の検証回数が予定より少なく、試薬などの購入費用が少なかったことと、研究発表に関する経費などを使用しなかったことに起因する。今後、検証回数を増やして結果をまとめ、発表する過程で使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Growth Suppression and Mitotic Defect Induced by JNJ-7706621, an Inhibitor of Cyclin-Dependent Kinases and Aurora Kinases.2012

    • 著者名/発表者名
      Matsuhashi A, Ohno T, Kimura M, Hara A, Saio M, Nagano A, Kawai G, Saitou M, Takigami I, Yamada K, Okano Y, Shimizu K.
    • 雑誌名

      Curr Cancer Drug Targets

      巻: 12 ページ: 625-639

    • DOI

      10.2174/156800912801784839

    • 査読あり
  • [学会発表] 軟部腫瘍の治療2012

    • 著者名/発表者名
      大野貴敏
    • 学会等名
      第32回 日整会骨軟部腫瘍特別研修会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      20121026-20121027
    • 招待講演
  • [学会発表] EWS/ATF1の発現は軟部肉腫の発生を誘導する2012

    • 著者名/発表者名
      山田一成、大野貴敏、永野昭仁、川井 豪、瀧上伊織、松橋 彩、齋藤 満、次田雅典、原 明、山田泰広、清水克時
    • 学会等名
      第45回日本整形外科学会骨軟部腫瘍学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120714-20120715
  • [図書] 運動器診療 最新ガイドライン、 II.病態・疾患別のガイドライン、 骨腫瘍 Ewing 肉腫の診断・治療指針2012

    • 著者名/発表者名
      大野貴敏
    • 総ページ数
      767
    • 出版者
      総合医学社

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公開日: 2014-07-24  

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