研究課題
Runx2は骨芽細胞分化のマスター遺伝子であるが、我々は網羅的な薬効スクリーニング法により、PPIであるランソプラゾールがRunx2プロモーター活性を上昇させるオフラベル効能があることを突き止めた。C3H10T1/2 cell、human mesenchymal stem cell、およびhuman osteosarcoma cellにおいて、ランソプラゾールは濃度依存性にRunx2のmRNA発現を上昇した。また、薬剤投与によるRunx2タンパクの上昇、さらにRunx2の核内移行の活性化をWestern blottingにて確認した。さらに、Runx2のターゲット遺伝子であるアルカリフォスファターゼやオステリックスの発現も薬剤濃度依存性に上昇させた。また、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養時に骨芽細胞誘導因子(デキサメサゾン、βグリセロリン酸、アスコルビン酸)とともにランソプラゾールを添加したところ、アルカリフォスファターゼおよびアリザリンレッドでの染色性が著しく上昇し、骨芽細胞への分化が促進されていることを確認した。次いで、ラット骨折モデルを作成し、ランソプラゾールの経口投与による骨折治癒促進効果を検討した。ランソプラゾールは骨折モデルにおけるnon-union、delayed unionの率を減少し、骨形態計測ではランソプラゾールの投与により類骨量と類骨面の増加が有意に示された。細胞内シグナル伝達に関する研究では、ランソプラゾールは骨形成因子(BMP)のnon-canonical pathwayにおけるTAK1とp38のリン酸化を活性化することを確認した。さらには、ランソプラゾールがTAK1の分解酵素であるCYLDに結合し、CYLDの機能を阻害することにより間接的にTAK1のポリユビキチン鎖の形成を促進させることも明らかとした。
2: おおむね順調に進展している
前年度の成果に加え、ランソプラゾールによるRunx2活性化の分子メカニズム(CYLDへの結合によるTAK1のポリユビキチネーションの促進)を明らかにし、現在、論文投稿中である。また臨床応用に向けて、in vivoにおけるランゾプラゾールによる骨形成促進効果を確認した。現在、ランソプラゾール含有人工骨の開発、臨床応用を視野に入れた研究を継続している。以上のように、申請書類において記載した平成25年度における研究計画の大部分はすでに達成されている。
ランソプラゾール含有人工骨に関する研究では、至適なランソプラゾールの徐放時期、期間、濃度を決定するための基礎研究を継続する。また、同時に動物実験(ラット、うさぎなど)も計画する。ラットでは全層欠損モデル、うさぎでは部分欠損モデルを作製し、薬剤含有人工骨の骨形成能を検討する。骨伝導能および誘導能を有する新規の人工骨の開発には、産学連携を視野に入れている。ランソプラゾール含有人工骨の開発において、この新規人工骨が医薬品あるいは医療機器としての承認を目指すのかが不透明な点が大きな問題点である。本件に関しては、国の指針、方向性に合致した形での研究が要求されるため、PMDAなどへの働きかけが必要となる。
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