研究課題/領域番号 |
24592232
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太田 壮一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70592484)
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研究分担者 |
柿木 良介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20314198)
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キーワード | 腕神経叢損傷 / 脊髄損傷 / 神経再生 / 神経移植 / 運動神経 |
研究概要 |
腕神経叢引き抜き損傷に対する新しい治療法として、神経根再埋め込み法が臨床例でも報告されているが、現行の外科的治療法を超える方法ではなかった。その原因の一つに埋め込んだ神経内へと伸張する軸索数が少ないことがあげられる。そこで、埋め込んだ神経内へと伸張する軸索数を増やすため、脊髄と末梢神経間に橋渡し移植する自家神経に前処理を行う方法を研究している。 平成25年度は、まず、最も基本となるラット腕神経叢の第6頚髄神経引き抜き損傷モデルについて、論文を発表することができた。そして、そのラット腕神経叢の第6頚髄神経引き抜き損傷モデルを作成し、その1週後に採取した自家神経を引き抜かれた神経と脊髄間に橋渡し移植するモデルをほぼ完成させた。計画当初との変更点は、(1)採取する移植神経を、腓腹神経ではなく、より簡便な隣接する第5頚髄神経へと変更(2)評価時期を術後8週目とし、移植神経および脊髄の組織学的評価を中心に行うことの2点である。移植神経の前処理方法として検討する薬剤の種類、使用量が多岐にわたるため、組織学的に有意差が現れる最短時期と思われる術後8週目を評価時期とした。 現在、移植神経に対する前処理方法の検討をin vitroで脊髄器官培養を利用して行う実験系もVyas Aらの報告を参考に作成中である(参考文献;Vyas A et al. An in vitro model of adult mammalian nerve repair, Exp Neurol, 223:112-8, 2010)。これは、生後数日のラットの脊髄切片を培養液に浸したフィルター上で培養する方法で、脊髄運動神経の軸索伸長能を検証することが可能となる。非常に手間のかかるラットモデルの作成数を必要最小限にすることができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
橋渡し自家神経移植を併用した引き抜き神経根再埋め込みラットモデルを作成し、様々な前処理をした移植神経への神経再生を評価する場合、大量のラットを必要とし、かなりの手間を要することとなる。そのため、当初の計画では無かった脊髄器官培養法を利用した方法も作成し、in vitroで移植神経への前処理の効果を評価することも同時進行で試みている。様々に培養条件を変更しているが、脊髄前角内の運動神経細胞から軸索を伸長させることに試行錯誤している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、第6頚髄神経根の引き抜き損傷後1週目に、前処理を加えた自家神経を引き抜かれた神経と脊髄間に移植するラットモデルを作成する。術後8週で移植神経および脊髄に対して組織学的な評価を行い、軸索誘導能の優れた移植神経の前処理方法を検討する。また、同時にin vitroで脊髄運動神経の軸索伸長能を検証できる脊髄器官培養法を作成する。このin vitroモデルが再現できれば、様々な薬剤、使用量についての検討が容易になると考えている。
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