研究課題/領域番号 |
24592237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
永野 聡 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50373139)
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研究分担者 |
小宮 節郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30178371)
瀬戸口 啓夫 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任准教授 (40423727)
小戝 健一郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90258418)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / 骨肉腫 / ヘッジホッグ経路 |
研究概要 |
本研究は骨肉腫の細胞内シグナル伝達に重要なGLI2をターゲットとした遺伝子治療の開発を目指している.今回、GLI2をターゲットとした骨肉腫への治療の一つのアプローチとして、三酸化ヒ素(ATO)を用いた分子標的治療の研究を行った. In vitroでATOの抗腫瘍効果をWST-1アッセイで評価したところ、ATO投与は骨肉腫細胞株の増殖を抑制した.Colony formation assayでもATOは骨肉腫の腫瘍形成能を阻害した.フローサイトメトリーによる解析では、ATOによる細胞死はapoptosisであることが明らかとなった.DNAの損傷を評価するコメットアッセイを行ったところ、ATO処理した骨肉腫細胞では損傷DNAが蓄積していた.Western blotでは、ATO処理した骨肉腫細胞ではcleaved PARPやcleaved caspase-3などが増加しており、その一方でBcl-2やBcl-XLなどの抗apoptosis分子が低下していた.これらの事から、ATOはDNA損傷を介してapoptosisを誘導していることが明らかとなった. GLI2をターゲットとしたウイルスベクターの開発においては、骨肉腫細胞においてGLI2の転写活性を確認するために、8×3′Gli-BS-δ51LucII (GLI-Luc)プラスミドを種々の正常細胞、骨肉腫細胞にトランスフェクションし、GLI2の転写活性を評価した.通常のlipofection試薬では導入効率が悪く評価できず、electroporationを行ったところ導入が確認され、GLI2の転写活性が種々の肉腫細胞で確認された.これを定量化し、次年度以降プロモーターとしてウイルスベクターに使用することができるかを検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GLIをターゲットとしたウイルスベクターを作成し、あらたな骨肉腫への治療を開発することが目的であった.ウイルスベクターの開発に関しては、候補となるプロモーターの評価を行った段階である.しかしATOという、新たなGLIをターゲットとした骨肉腫への分子標的治療の開発に成功した.ATOは白血病に対して承認された薬剤であり、早期の臨床応用が可能であると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
GLIの転写活性を反映するプロモーターの評価、選定を行い、骨肉腫に特異的に活性を持ち、正常細胞で活性をもたない(低い)プロモーターを決定する.このプロモーターを用いて、我々が独自に開発した癌特異的増殖制御型アデノウイルスベクター構築システム(Nagano et al, Gene Ther, 2005)をもちいて、GLI依存型増殖制御型アデノウイルスベクターの構築を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
ウイルスベクター構築にかかわる分子生物学的試薬、種々の癌細胞、正常細胞の培養に必要な試薬培地、が必要となる.また遺伝子構築を行った際にはシークエンスの確認が必要であり、シークエンサーの運用に関わる経費が必要である. また、成果を発表して意見交換をおこなう学会発表の旅費も必要である.
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