研究課題/領域番号 |
24592237
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
永野 聡 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (50373139)
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研究分担者 |
小宮 節郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30178371)
瀬戸口 啓夫 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40423727)
小戝 健一郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90258418)
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キーワード | 遺伝子治療 / ヘッジホッグ経路 / サバイビン / がん幹細胞 |
研究概要 |
本研究は骨軟部腫瘍の増殖や転移に重要な分子として、HedgehogシグナルのGLI2に着目して研究している。これまで、骨肉腫の新しい分子標的治療として、Hedgehog阻害効果をもつ三酸化ヒ素(ATO)が骨肉腫に有効であることを明らかにしてきたが、最後にマウス骨肉腫移植モデルに対してATOの治療効果を検証した。143B骨肉腫細胞をヌードマウスに移植し、1週後から、10μg/gのATOを腹腔内投与した。対照群は溶媒のNaOHを注入した。5週後から2群の増殖カーブには有意差が見られ、対照群は11週までに死亡した。ATO群は半数が生存し、優位に生存率も延長することが明らかとなった。採取した腫瘍組織でのTUNEL染色では約半数の細胞が陽性であった。これらの結果から、すでに白血病の治療薬として認可されているATOが、GLI2を含むHedghog経路の抑制を介して、骨肉腫に対する分子標的治療薬となりうることを論文として報告した(PLoS One, 2013). また、我々が開発した、Survivin依存性癌特異的増殖型アデノウイルス(Surv.m-CRA)が、癌幹細胞にも有効であることも論文に報告した(J Transl Med, 2014)。通常、がん幹細胞は種々の治療に対して抵抗性であり、sarcoma-initiating cellであるFGFR3陽性横紋筋肉腫細胞は、遺伝子治療に対しても抵抗性であると考えられる。しかし、横紋筋肉腫細胞KYM-1に対するSurv.m-CRAの抗腫瘍効果は、母集団に対してよりも、肉腫幹細胞(FGFR3陽性)に対して高いという結果が得られた。これは、腫瘍特異性の高いプロモーターを用いたCRAが、悪性度を増したがん幹細胞に対しても高く有効であることを示した結果である。 上記2論文で示したようにGLI2の肉腫へのターゲットとしての有用性、CRAの腫瘍効果の高さからは、本研究の発展性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GLI2に関してすぐに臨床応用可能な新規治療法を論文として報告できたことは、社会にも貢献できる業績と考える。また、CRAのがん治療における新たな長所を報告できたことも、評価される。
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今後の研究の推進方策 |
我々が開発し報告したSurvivinプロモーターにより制御されたCRAは、今回の研究でも明らかになったように高い抗腫瘍効果を持つ。これまで肉腫の増殖、転移に働くHedgehog経路に関する研究を行ってきたため、GLI2により制御されたCRAの開発を目標としてきた。GLI2プロモーターのクローニング、トランスフェクションの効率が低いこともあり、GLI2プロモーターに限らず、効果の高いCRAの開発を目指して研究を継続したい。
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