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2013 年度 実施状況報告書

骨腫瘍に対する患肢温存を目的とした細胞活性を有した液体窒素処理骨移植法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24592240
研究機関奈良県立医科大学

研究代表者

藤間 保晶  奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60448777)

研究分担者 朴木 寛弥  奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40336863)
田中 康仁  奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
キーワード移植・再生医療 / 骨移植 / 処理骨 / mesenchymal cell / osteogenesis / 液体窒素
研究概要

液体窒素処理自家骨は悪性腫瘍切除後の再建に関して手技の簡便さや免疫拒絶を回避できるなど非常に有用であるが、骨形成能を中心とした細胞活性の低下が問題となる。今年度は昨年度に作成したin vivo 実験モデルによる検討を行った。
実験にはラットを用い、大腿骨より骨髄細胞を採取し、培養により骨髄間葉系細胞を獲得し、移植細胞を作製した。10週齢ラット大腿骨より自家移植骨を想定した移植骨片を作成し、その骨片を骨腫瘍の臨床に則し液体窒素に20分間浸漬、20分間室温にて処理した。処理により細胞活性を大きく損失した骨片に、細胞活性を外的に付与する目的で、研究代表者藤間らが開発した「細胞致死処理骨に生細胞を搭載した骨補填システム(特許第3951023)」の手法に基づき、培養細胞を搭載させ、細胞搭載群を作成し、同系ラット皮下に移植した。その際、比較対象として細胞を搭載していない骨片(非搭載群)を同様に移植した。移植2週、4週後に両群骨片を摘出し、ALP活性を測定した。結果、ALP活性は移植2週、4週ともに搭載群が有意に高値であった。併せて行った組織学的評価では移植2週では両群ともに壊死骨のみであったが、4週では非搭載群では壊死骨のみであったのに対し、搭載群では新生骨の形成を認めた。
本手技の欠点として、付与される細胞活性にバイアスを認めることである。そこで、移植細胞を移植骨片に効率よく描着させる手段として細胞接着因子を使用した検討を開始している。細胞接着因子としてファイブロネクチン(Fbn)を用いている。培養プレート上でのFbnによる間葉系細胞の接着率の向上について検証したところ、Fbn非使用時と比較すると向上していることが確認された。現在、細胞接着因子の効果を三次元的に検証するにあたり、移植骨片間のバイアスを回避するべく工業的に作製され臨床応用されている人工骨を移植担体にして検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度に作成した臨床応用に則した動物実験モデルで、本液体窒素処理骨に再生医療技術により培養・獲得された骨髄由来の間葉系細胞を搭載させることで、骨形成能を付与することが可能であることを生化学的検討(ALP活性測定)および組織学的検討から証明された。
また、本検討から本手法の弱点、克服すべき点が確認され、それに対する手法の開発として、実際に細胞接着因子を用いた検討を開始している。その点からも、比較的順調に経過していると考える。

今後の研究の推進方策

整形外科の骨腫瘍の治療において実際に臨床応用されている液体窒素処理骨の問題点を克服すべく検討する研究である。液体窒素による殺細胞処理により、骨形成能を主とした細胞活性を大きく損失した移植骨の細胞活性を回復する手法として、現在、再生医療による細胞培養技術により骨髄から培養増殖して獲得した間葉系細胞を単純に注入・浸漬することで、骨形成能が付与できる可能性が示されつつある。今後は、本手法により付与された細胞活性を遺伝学的レベルまで詳細に検証し、証明する必要がある。また、臨床応用を想定して、よりflexibleに、かつ効率よく、細胞活性をレシピエントの骨組織に付与する手法を講じる必要がある。そのために、現在は細胞接着の観点からアプローチを試みているが、今後は薬剤やゲル(三次元培養)を用いた手法の開発も考えている。

次年度の研究費の使用計画

購入を予定していたセルカウンターが、培養の清潔操作に準拠したものでなかった為に、購入を延期した。また、三次元培養のpilot的検討を次年度以降にしたこと、および、本年度使用した細胞接着因子が安価なものであったことから、若干の次年度使用額が生じた。また、本年度後半に成果発表として応募した国際学会(平成26年6月)への参加費が次年度に予想されたこともあり、次年度予算の調節を図った。
細胞接着因子の効果については、厳密なデータを収集する目的のため、現在pilot実験に使用しているものより精製度、純度の高いもので予定している(平成26年度5月に購入し、既に研究開始している)。また、国際幹細胞学会(平成26年6月、カナダ)への本研究発表(Bone marrow-derived mesenchymal stem cells(BMSCs) revitalize autograft bone sterilized by liquid nitrogen with augmented osteogenic property in rat model)の採択が決定したことから、次年度以降は積極的な学術交流による技術開発が必要になってくる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 再生医療におけるアログラフト2013

    • 著者名/発表者名
      藤間保晶、大串始
    • 雑誌名

      再生医療における臨床研究と製品開発

      巻: - ページ: 109-115

  • [雑誌論文] 培養骨芽細胞シートによる放射線照射自家処理骨の骨形成2013

    • 著者名/発表者名
      内原好信, 赤羽学, 森田有亮, 中崎真太郎, 上羽智之, 清水隆昌, 倉知彦, 藤間保晶, 川手健次, 田中康仁
    • 雑誌名

      日整会誌(J.Jpn.Orthop.Assoc.)

      巻: 87(8) ページ: 1571

    • 査読あり
  • [雑誌論文] FibronectinをコートしたβTCPの骨形成能 βTCPの気孔率の影響について2013

    • 著者名/発表者名
      谷掛洋平, 藤間保晶, 土肥祥子, 岩田栄一朗, 赤羽学, 川手健次, 田中康仁, 大串始
    • 雑誌名

      日整会誌(J.Jpn.Orthop.Assoc.)

      巻: 87(8) ページ: 1380

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 材料骨接合面への間葉系幹細胞の応用2013

    • 著者名/発表者名
      小川宗宏、藤間保晶、田中康仁
    • 雑誌名

      整形・災害外科

      巻: 56(5) ページ: 514-545

  • [学会発表] FibronectinをコートしたβTCPの骨形成能 βTCPの気孔率の影響について2013

    • 著者名/発表者名
      谷掛洋平, 藤間保晶, 土肥祥子, 岩田栄一朗, 赤羽学, 川手健次, 田中康仁, 大串始
    • 学会等名
      第28回日本整形外科学会基礎学術集会
    • 発表場所
      千葉市
    • 年月日
      20131017-20131018
  • [学会発表] 培養骨芽細胞シートによる放射線照射自家処理骨の骨形成2013

    • 著者名/発表者名
      内原好信, 赤羽学, 森田有亮, 中崎真太郎, 上羽智之, 清水隆昌, 倉知彦, 藤間保晶, 川手健次, 田中康仁
    • 学会等名
      第28回日本整形外科学会基礎学術集会
    • 発表場所
      千葉市
    • 年月日
      20131017-20131018

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公開日: 2015-05-28  

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