研究課題/領域番号 |
24592241
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
城戸 顕 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70382306)
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研究分担者 |
今野 元博 近畿大学, 医学部附属病院, 准教授 (00278681)
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
朴木 寛弥 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40336863)
五條 理志 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90316745)
清水 隆昌 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70464667)
上羽 智之 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (50572963)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 骨微小観光 / がんの骨転移 / 血中循環腫瘍細胞 / 近赤外蛍光観察 / 磁気ビーズ / 骨梁微細構造解析 / 骨転移キャンサーボード |
研究実績の概要 |
本研究は担がん状態の生体において、がん病巣部に骨髄より動員される「健常の(がん化していない)間葉系幹細胞の振る舞い」をキーとして、この骨微小環境の動態ががんの病態・病勢に与えるはたらきを明らかにし、新たな診断並びに治療法の確立を目指すものである。間葉系幹細胞は正常骨髄からがん病巣に動員され、がん細胞自身が生来の環境を自己の増殖に有利になるように再構築し直すことによってがんの進展を促進する。本研究にてわれわれは培養細胞、ラット動物モデルおよびヒト臨床研究を通じて1)末梢血液からの間葉系幹細胞の分離・検出 2)骨微小環境・がん微小環境の分子生物学的検索および3)生体蛍光観察による病勢評価を行い報告してきた。また、4)生体内骨微小環境観察の観点から、臨床用CTを用いた骨梁微細構造観察の応用も開始し、さらに5)骨転移を有する担がん患者の病勢評価のためのキャンサーボードの運用の効率化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
11.現在までの達成度 1)間葉系幹細胞の検出[動物実験]初年度、2年度において培養細胞株を用いたラット担がんモデルに用い、末梢血液からの間葉系幹細胞の検出方法を効率化し確立した(磁気ビーズ法)。また、ラット実験転移病巣(肺)への間葉系幹細胞の集積を複数の腫瘍細胞株にて検証した。さらに外来性の間葉系幹細胞が腫瘍病巣の(転移巣ならびに原発巣)の増殖を促進することを見出し報告した。腫瘍増殖を促進する生態環境を観察する上で近赤外蛍光観察による非侵襲的生体蛍光観察が有用であることを見出し、倫理委員会の認可を得てその臨床応用を開始した。[ヒト臨床研究]がん患者の末梢血液を用いた間葉系幹細胞検出について昨年度までに当初の計画通り20名の患者を登録し(うち永眠された5名については既にフォロー終了)病勢との相関を検討した。間葉系幹細胞は原病および転移病巣の双方の病勢に相関する傾向を示し、特に終末期患者においては骨転移の病態の独立した指標とはなり難いことを見出した。 2)微小環境の生体観察による評価[近赤外イメージング手法] 間葉系幹細胞の動員・集積は原発巣および転移巣の増殖に有利な環境を再構築する。血管新生を再構築の一つの指標として近赤外イメージング手法を用いた生体観察を試みた。昨年度までにラット、ブタの関節及び軟部組織の近赤外イメージング観察を行い観察手技の確立の後、本学倫理委員会の認可を得てヒト関節病変(6例)を対象とした近赤外イメージング観察を行った。 [骨梁微細構造解析]さらに非侵襲的な骨微細構造観察の観点から、非がん対照群として炎症性疾患・加齢疾患をも対象として臨床用CTを用いた骨梁微細構造観察の応用も開始した。[担がん患者病勢評価]骨転移を有する担がん患者の病勢評価に際してはキャンサーボードを継続運用しその経過を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
1)stemness関連表面抗原の解析(補助事業期間の延長申請) 昨年度にラットがん細胞とラット間葉系幹細胞の共培養系にて幹細胞遊走因子(HMGB1, CXCL12)について免疫細胞化学法とPCR法でその動員効果を検討し一定の成果を得ましたが、間葉系幹細胞の表面抗原について、細胞継代の過程で必ずしも安定したstemnessを呈しない群が見受けられたため、計画を一部変更しstemness(またはmultipotency)の検証を行うことにしたため、補助事業期間の延長を申請しご承認頂きました。 2)間葉系幹細胞のがん細胞による再教育メカニズムについて (上記表面抗原解析に関連して)がん細胞は幾つかのメカニズムで間葉系幹細胞を教育し、がん組織内間質細胞に分化誘導する(よりがんの進展に適した間質に分化する:がん化ではない)ことが明らかになってきた。延長期間に本メカニズムについて共培養系を用い化学発光サイトカインアレイにて詳細を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
stemness関連表面抗原の解析(補助事業期間の延長申請)について:昨年度までにラットがん細胞とラット間葉系幹細胞を用い、共培養系にて幹細胞遊走因子(HMGB1, CXCL12)を免疫細胞化学法とPCR法にてその動員効果を検討し一定の成果を得ました。しかしながら、われわれの用いる間葉系幹細胞の表面抗原について、細胞継代の過程で必ずしも安定したstemnessを呈しない群が少なからず見受けられたため、計画を一部変更し、そのstemnessの検証を行うことにしたため、補助事業期間の延長を申請させていただきご承認頂きました。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、われわれの実験系での(これまで我々が間葉系幹細胞としてそのデータを取り扱ってきた細胞群の)stemness(またはmultipotency)の検証と解析を行わせて頂くことと致しました。さらに(本抗原解析に関連して)我々の実験系にて、がん細胞は幾つかのメカニズムで間葉系幹細胞を教育し、がん組織内間質細胞に分化誘導する(よりがんの進展に適した間質に分化させる:がん化ではない)ことが明らかになってきました。ご承認頂いた本延長期間にこのメカニズムについて共培養系を用い化学発光サイトカインアレイにて詳細を検索する計画であります。
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