研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は治療抵抗性の原発性悪性骨・軟部腫瘍の病態解明とそれにもとづいた、ナノ粒子を補助療法として組み合わせることによる、より安全で効果的な治療法を確立することである。様々なナノ粒子が近年報告されているなか、我々の用いるデキストラン型ナノ粒子は生体に対する副作用が少なく、容易に側鎖等、修飾可能という特徴がある。治療経過中に薬剤が奏効しなくなる悪性腫瘍の薬剤耐性の問題は肉腫だけではなく、癌治療全体の進歩を阻んでおり、ナノ粒子はP-gp等の抗癌剤排出ポンプを回避すること、抗癌剤やsiRNAを容易に結合しうること等から、骨・軟部腫瘍治療の分野で新しい治療概念を提示し治療成績の大幅な改善をもたらすものと考える。近年様々なナノ粒子が報告され有効性が諸家より報告されているが、我々の用いるナノ粒子はNortheastern大学(米国)との共同開発で、生体に対する副作用がなく、容易に側鎖等、修飾可能なことから注目されている。ナノ粒子は一旦体内に入ったあと、腫瘍の血管新生に伴う脆弱性の影響で(enhanced permeability and retention(EPR))、心臓、肝臓等、他の重要臓器には集積せず、極めて高い濃度で腫瘍に特異的に集積することが既に報告されている。我々は、ナノ粒子がP-gp等の抗癌剤排出ポンプを回避することを報告したが、今回これを応用し、既存の抗癌剤をナノ粒子に結合させることで低容量でより高い抗腫瘍効果を得られないか検討を行った。骨肉腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫の原発性悪性骨腫瘍細胞株をまた滑膜肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫等の原発性悪性軟部腫瘍の細胞株を準備し、薬剤耐性株の樹立を行った。ナノ粒子に肉腫の治療においてキードラッグであるドキソルビシンやイフォマイドを含有させ抗腫瘍効果を検討し、in vitroの抗腫瘍効果を検討した。
2: おおむね順調に進展している
ナノ粒子によるdrug delivery、遺伝子導入は近年注目を集めている分野であり、今回使用するナノ粒子はこの分野の研究を進める上で有用なツールであると考えられる。薬剤耐性を示す、癌幹細胞、放射線耐性肉腫に対するナノ粒子の効果、遺伝子治療における樹状細胞への腫瘍抗原のdelivery等、ナノ粒子を用いた治療の可能性は多岐にわたる。最終的には腫瘍細胞を能動的にターゲッティングし、含有した抗癌剤やsiRNAにより腫瘍細胞を死滅させ、さらにそれをイメージングプローブ等により可視化するマルチファンクショナルなナノ粒子を作成することにより、悪性骨・軟部腫瘍の治療に重要な知見を見出しうるものと期待している。デキストラン型ナノ粒子に各種抗癌剤、siRNA、蛍光色素を付着、含有させることにより、悪性骨・軟部腫瘍への影響を検討していく予定であり、平成24年度には生成した新規ナノ粒子を数種類の肉腫細胞株に作用させることにより、in vitroでの解析を行った。悪性骨・軟部腫瘍を構成する肉腫細胞の細胞株は、入手可能な種類が少なく、我々が独自に樹立を行っているが、その細胞の生物特性が、in vivoで再現されるかどうか、まだ検証がなされていない。
ナノ粒子の臨床試験への導入の際に、動物実験は必要不可欠である。樹立した薬剤耐性骨肉腫、軟骨肉腫、Ewing肉腫細胞株はヌードマウスの大腿骨内へ、滑膜肉腫、悪性線維性組織球腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫等の薬剤耐性原発性悪性軟部肉腫の細胞株はマウス背部皮下へ接種予定である。作成した肉腫モデルへは尾静脈から各種ナノ粒子を投与する。すなわち、1.既存の抗癌剤、2.各種siRNA、3.キナーゼ抑制剤等を含有させたものとさらに表面にin-vitroの実験より肉腫特異的にターゲットとなりうるligandや抗体を付着させた能動的に腫瘍に蓄積しるるナノ粒子を投与する計画である。投与したあとは各臓器の組織切片を作成し、ナノ粒子の集積の有無を腫瘍組織において、また各臓器において解析する。これを血液データと連動させることにより、副作用の有無等を検討する。またCy5をナノ粒子に結合させることにより、腫瘍の増殖を蛍光in-vivoイメージング装置を用いて解析する。これにより腫瘍増殖・腫瘍転移能に対する影響を検討することを計画している。
より多くの肉腫細胞株の購入と、in vivo評価のためのヌードマウスの購入を計画している。肉腫モデルマウス尾静脈から各種ナノ粒子を投与し、1.既存の抗癌剤、2.各種siRNA、3.キナーゼ抑制剤等を含有させたものとさらに表面にin vitroの実験より肉腫特異的にターゲットとなりうるligandや抗体を付着させた能動的に腫瘍に蓄積しるるナノ粒子を投与することを計画している。投与したあとは各臓器の組織切片を作成し、ナノ粒子の集積の有無を腫瘍組織において、また各臓器において解析する。これを血液データと連動させることにより、副作用の有無等を検討する。最後に、Cy5をナノ粒子に結合させることにより、腫瘍の増殖を蛍光in-vivoイメージング装置を用いて解析する。これにより腫瘍増殖・腫瘍転移能に対する影響を検討することを計画している。平成24年度未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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Pediatr Blood Cancer.
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Pathol Int.
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http://www.keio-mog.jp/