研究概要 |
骨肉腫は予後不良の悪性腫瘍であり、放射線感受性が低く化学療法にも限界があることから、新規の有効な治療法が切望されている。最近我々は、光化学療法に用いられるポルフィリン化合物HPPH の誘導体の1つ「化合物717」に放射線増感効果があることを発見した。HPPH 誘導体投与後に放射線を当てた細胞株では、放射線のみ、もしくは化合物のみの群と比べて顕著に細胞死が誘導されることが、乳癌、膀胱癌、さらに骨肉腫細胞株一種で確認できた。本研究では、HPPH 誘導体の放射線増感剤としての汎用性、作用機序を調べるため、骨肉腫細胞株を用いたin vitro, in vivoでの解析を計画した。 MG63 以外の骨肉腫細胞株G292, HOS, SAOS2 に対する717の放射線増感効果を培養系において調べたところ、MG63 の場合と同様、0.5ug/ml 以上の濃度で、増感効果が観察された。しかしながら、この実験が終了した時点で、用いていた717化合物が枯渇してきたため再度合成を行ったところ、717の放射線増感効果がどの細胞においても確認されなくなった。化合物は日大理工学部および米国ロズウェルパーク癌研究所の共同研究者らが複数回再合成を行ったが、効果のあるものが得られなくなった。照射装置の点検および細胞のロットの確認なども行ったが原因が不明である。 そこで、現時点では類似の新規ポルフィリン化合物を日大理工学部と共同で合成し、MG63 細胞を用いてスクリーニングを行っている。
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