研究課題
肉腫の特徴として疾患特異的な染色体転座の存在が挙げられる。染色体転座は肉腫発生の重要な要因であるが、同様の染色体転座は造血器腫瘍でも広く認められており、腫瘍発生において大きな比重を占める極めて重要な発がんメカニズムと考えられる。染色体転座発生の背景には、DNA二本鎖切断修復機構の異常が存在する可能性がある。近年これらのDNA二本鎖切断修復を司る分子群が次々に同定されてきた。しかし、肉腫におけるDNA二本鎖切断修復とその異常については、全く解析されていない。我々は、本研究に先立つ研究により、ユーイング肉腫細胞株においてはDNA二本鎖切断修復因子の遺伝子発現に大きな異常がみられることを初めて見出した。これらの結果を踏まえ、本研究では、肉腫細胞におけるDNA二本鎖切断修復を担う分子の構造および発現の異常の意義を解明することを目的とした。具体的には、染色体転座を有するヒト悪性骨軟部腫瘍由来株化培養細胞および手術等により得られたヒト組織標品を用いて、DNA二本鎖切断修復に関わる分子異常を系統的に解析することとした。最終年度のH26年度は、これまで肉腫細胞を用いて得られたmRNAレベルの発現解析結果を他の遺伝学的背景をもつ腫瘍細胞と比較した。その結果、疾患特異的な転座をもたない癌由来の腫瘍細胞においても、DNA二本鎖切断修復因子発現の異常がみられることを見出した。また、このカテゴリーを特徴づける分子異常としてDNAミスマッチ修復因子の発現異常を見出した。現在、DNAミスマッチ修復異常を特徴づけるマイクロサテライト配列の不安定化がEwing肉腫細胞で観察されるか、手術等により得られたヒト組織標品を用いて解析をおこなっている。また、in vitroでみとめられたDNA二本鎖切断修復因子の核内フォーカス形成が、さまざまな電離放射線照射によりどのように修飾されるか、分子異常の機能的側面についてもアプローチしている。
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