研究課題/領域番号 |
24592252
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
高木 理彰 山形大学, 医学部, 教授 (40241707)
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研究分担者 |
佐々木 幹 山形大学, 医学部, 准教授 (00444034)
高窪 祐弥 山形大学, 医学部, 助教 (80431641)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Toll様受容体 / NOD様受容体 / 人工関節 / 自然免疫 / 非感染性骨溶解 |
研究概要 |
これまで我々は人工関節摩耗粉に対する骨溶解や周囲結合組織の脆弱化における生体反応機構に関する研究においてマクロファージを中心とした細胞性反応と破骨細胞性骨吸収機構を解析してきた。この一連の研究の過程で人工関節周囲の生体反応に自然免疫機構が関与することを示し、インプラント感染症におけるToll様受容体(TLR )、NOD様受容体(NLR)を介した自然免疫応答の解析を行った。TLR、NLRは病原性細菌の菌体成分や自己構成成分を認識しNF-κβ, AP-1, caspase-1の経路を通して TNF-αやIL-1βの産生を誘導する。菌体成分を用いたリガンド刺激ではTLRを介したシグナル伝達間に促進的ないしは抑制的な相互作用が存在することを報告してきたが(Takagi M 2011)、これに加え、NLRもまたこれらの自然免疫応答に関与していることが示唆された(Naganuma Y 2013)。インプラント感染症ではバイオフィルム形成性の病態を示し、遷延化することも少なくない(Sasaki K 2009 , 高木 2010 )。この過程にTLRおよびNLRを含む病原体認識受容体を介した免疫応答が深く関与する可能性が示唆され(Takagi 2011 )、同時に免疫応答調節分子の使用やインテリジェントマテリアルの併用によって、自然免疫応答を制御してインプラント感染症の発生、炎症の遷延化を抑制できる可能性が示されつつある(Takagi 2011 )。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
股関節ないしは膝関節手術から得られた感染性人工関節周囲組織、非感染性弛緩人工関節周囲組織、変形性関節症、関節リウマチ由来の滑膜組織を用いて、病理組織学的検索を行いました。パラフィン包埋組織切片・HE染色による細胞形態評価と凍結組織切片・免疫組織染色によりマクロファージ(CD68)、好中球 (CD15)を同定し、対象組織の細胞分布を明らかにしました。また免疫組織学的にマクロファージ(CD68)、好中球 (CD15)における自然免疫系受容体TLRs, NLRs及びそれらの関連分子TLRs、NLRs、caspase 1, TNF-α, IL-1βの局在の有無を蛍光二重染色法で判定しました。以上については日本整形外科学会基礎学術集会(2013年10月、千葉)、Orthopaedic Research Society(2014年3月、New Orleans)で発表予定です。 また細胞株RAW264.7を用いてTitanium particle及びエンドトキシン付着Titanium particleによる刺激試験を行い、TLRs、NLRs及びこれらの関連分子、TNF-α、IL-1βについてmRNA発現動態、Western blottingによるタンパク発現動態の解析を行いました。解析結果に関しては第86回日本整形外科学会学術集会(2013年5月、広島)で報告予定です。 以上より概ね研究計画通りに進展していると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、マウス骨髄由来の初代培養マクロファージを用いて、Titanium particle及びエンドトキシン付着Titanium particleによる刺激試験を行い、昨年度細胞株で得られた条件設定を基にTLRs、NLRs及びこれらの関連分子、TNF-α、IL-1βのmRNA発現動態、Western blottingによるタンパク発現動態の解析を行う予定です。またこれらに加え、同様の分子の発現動態をFACS、免疫細胞染色法を用いて詳細に検討します。これらの解析により人工関節弛緩の病態生理の克明への一助とします。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度申請予算の残額1,130円はH25年度予算に繰り越して計上いたします。 消耗品の購入に関して、マウス購入・飼育費、細胞培養に関わる試薬の購入、RT-PCR・realtimePCRに関わる試薬の購入、Western blottingに関わる試薬の購入、Western blotting・フローサイトメトリー・免疫細胞染色に必要な各種抗体の購入、実験実施に必要な各種消耗品(培養皿、チューブ、ピペット、マイクロピペットチップなど)購入、実験施設備品の購入を行います。また、研究課題の成果報告を国内学会(日本整形外科学会学術総会:広島、日本整形外科学会基礎学術集会:千葉)、国際学会(ORS:New Orleans, USA)で行うため、これら学会参加への旅費として使用いたします。
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