研究課題/領域番号 |
24592256
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
門野 夕峰 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70401065)
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研究分担者 |
安井 哲郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30583108)
大島 寧 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50570016)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 分化 / RANKL |
研究概要 |
マウスの骨髄にRANKL 刺激を行うことによる破骨細胞分化系を用いて、Msi2 の発現量及び局在の変化を解析した。破骨細胞前駆細胞およびRANKL 刺激後1-4 日のmRNA とタンパクを抽出し、Real-time PCR と免疫ブロッティングを行ったところ、分化にともないMsi2のmRNA発現量とタンパク量の増加が生じることが確認された。。さらに、同 じ系で免疫染色を行い、分化に伴いMsi2の発現と、その興味深い局在の変化を確認することができた。 破骨細胞前駆細胞に対し、レトロウイルスを用いてMsi2 に対するshRNAの導入を行った。遺伝子導入後の破骨細胞前駆細胞とそこから分化させた破骨細胞についてmRNA およびタンパクを回収し、Msi2 のReal-time PCR でShLuciferaseを導入した系に対し、ノックダウンが機能していることを確認した。さらに、TRAP染色を行い、対照群と比較したところ、破骨細胞分化が抑制されていることが判明した。破骨細胞数を揃えて機能を評価するためにPit formationも行ったが、これは対照群と有意差は生じなかった。これらのことから破骨細胞分化においてMsi2が役割を果たしていることが示唆された。 そのため、現在レトロウイルスによる強制発現および、ノックアウトマウスを入手しての形態計測、マイクロCTなどによる破骨細胞および骨量の解析に向けて準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、RANKL による破骨細胞分化系におけるMsi2 の動態の解析及びMsi2 の強制発現および抑制による破骨細胞分化への影響の解析を行う予定であった。 まず、マウスの骨髄にRANKL 刺激を行うことによる破骨細胞分化系を用いて、Msi2 の発現量及び局在の変化を解析することから開始した。 マウスの長管骨骨髄から細胞を採取し、M-CSF 存在下で2 日間培養し破骨細胞前駆細胞を得て、この前駆細胞をM-CSF と分化因子RANKL の存在下でさらに3-4 日間培養することで破骨細胞へと分化させる系は確立できた。そこで、破骨細胞前駆細胞およびRANKL 刺激後1-4 日のmRNA とタンパクを抽出し、Real-time PCR と免疫ブロッティングを行い、Msi2遺伝子発現量とそのタンパク発現量の継時的な変化を観察し、分化の過程での発現パターンを得ることもできた。同じ系での免疫染色では興味深い結果を得た。これらにより当初のRANKL 刺激による破骨細胞分化の過程においてMsi2 の発現していることを確認し、その量と局在の特性を評価することはおおむね行えたと考えられる。 RANKL による破骨細胞分化系においてMsi2 の発現量を変化させ、破骨細胞の形態や数、破骨細胞分化マーカーの発現量の対照群に対する比較を通して分化におこる変化を解析した。破骨細胞前駆細胞に対し、レトロウイルスを用いてMsi2 に対するshRNAの導入を行い、遺伝子導入後の破骨細胞前駆細胞とそこから分化させた破骨細胞についてmRNA を回収し、実際のMsi2 のノックダウン効率をrealtime PCRで確認した。 強制発現についてはベクターの作成に時間がかかりまだ行えていないが、全体としてはおおむね予定通りであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ShRNAを用いた系において、破骨細胞分化マーカーの発現量を評価する。また、TRA P 陽性細胞の形状や面積の比較も行い、分化への影響の有無、いかなる特性を持つ変化が出現しているのかを評価する。 レトロウイルスを用いてMsi2の強制発現を行い、TRAP染色において破骨細胞の形態や数、破骨細胞分化マーカーの発現量を評価する。単位面積あたりのTRAP 陽性多核細胞を対照群と遺伝子導入群で比較する。また、TRAP 陽性細胞の形状や面積の比較も行い、分化に影響の有無、いかなる特性をもつ変化が出現しているのかを評価する。 両方の系において回収したmRNA を用いて破骨細胞分化マーカーやNotch 関連遺伝子、Numb の発現量をReal-time PCR で評価する。発現量の変化する遺伝子、変化しない遺伝子をもとに、既知のRANKL により惹起されるシグナルのどこにMsi2が関わっているのかを考察し、その役割を明確にする。現在判明しているRANKL によって誘導されるシグナル経路にMsi2 を書き加え、より明確で詳細な経路を描出する。 Msi familly にはMsi2 に加えてMsi1 も存在する。Msi2 は全身で発現しているが、Msi1 は神経系、上皮系前駆細胞、消化管、粘膜、乳腺、表皮に主に発現している。配列の相同性は非常に高く、Msi1 とMsi2 が協同して働くことも多い。予備実験の結果から、破骨細胞分化の過程においてはMsi1 の発現は誘導されないが、Msi2 を抑 制した際に代償的に働く可能性も考えられるので、Msi1 についても同様に解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画では新たな設備投資を必要とせず、薬品、実験動物などの消耗品が研究経費の主体となる。Msi2 の破骨細胞分化に関する役割を明確にするため、各種シグナル分子、転写因子の発現量の変化を探るために免疫ブロッティングやReal-time PCR を行う予定である。レトロウイルスを用いた遺伝子導入においては導入された遺伝子の確認にシークエンスを行う。 また破骨細胞分化に関する本研究計画の特性上、細胞実験において細胞株を用いることは難しく、実験毎にマウスから直接破骨細胞前駆細胞を採取する必要がある。 さらに、ノックアウトマウスを用いた実験も検討しており、その取得と維持に関する費用も生じると考えられる。
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