研究実績の概要 |
【目的】Sirt6は核に存在するNAD依存性脱アセチル化酵素、ADPリボシルトランスフェラーゼである。Sirt6-/-マウスは、加齢変化と類似した表現型を呈するが、Sirt6の骨軟骨代謝における役割は不明である。本研究の目的は、Sirt6を介する軟骨代謝のメカニズムを解明することである。 【方法】Sirt6-/-マウスと野生型マウスを免疫組織学的に評価した。生後1週の長管骨骨端部から採取された初代軟骨細胞、および軟骨細胞様細胞株ATDC5を用いてSirt6の機能評価を行った。 【結果】出生直後においてSirt6-/-マウスは、四肢長管骨が野生型よりも短縮していた。成長とともに四肢の短縮は明らかとなり、骨端部においては、二次骨化中心の成熟が遅延した。生後2週の脛骨成長板軟骨ではSirt6-/-マウスにおいて増殖層と肥大軟骨層が短縮し、増殖マーカーPCNA陽性細胞が減少した。TUNEL法では明らかな差は認められなかったが、senescenceマーカーであるPAI-1、IL-6などの発現がSirt6-/-由来軟骨にて増加していた。成長板軟骨におけるCol2a1, Col10a1およびIhhの発現がSirt6-/-マウスにおいて低下していた。ATDC5および初代軟骨細胞にてsiRNAによりSirt6をノックダウン(Sirt6KD)すると、軟骨増殖マーカー、分化マーカーが低下し, Ihhとその下流遺伝子Gli1, Patchedの発現が低下した。転写因子ATF4はIhh転写を正に制御するが、初代軟骨細胞を用いたChIP assayの結果、Ihhプロモーターに対するATF4結合はSirt6KDによって抑制された。 【結論】Sirt6は少なくとも部分的にIhh発現制御を介して軟骨細胞の分化、増殖を促進すること、軟骨細胞のsenescenceを抑制することを明らかにした。
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