研究課題/領域番号 |
24592259
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
金子 浩史 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60566975)
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研究分担者 |
鬼頭 浩史 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40291174)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | SOX9 / 軟骨細胞 / 薬効スクリーニング / オフラベル治療薬 / 軟骨再生 / プロモーター / ルシフェラーゼ / 細胞培養 |
研究概要 |
SOX9は軟骨基質の形質維持に極めて重要であり、SOX9の発現を促進することにより軟骨変性の防止あるいは変性軟骨の修復が期待できる。SOX9を活性化する薬剤を同定する目的で1184種類の既存薬を用いて薬効スクリーニングを行ったところ、2 種類の薬剤(抗炎症薬X と抗酸化物質Y)がSOX9のプロモーター活性を濃度依存性に上昇させた。ヒト軟骨細胞株を単層培養して、ジメチルスルホキシド(DMSO)で溶かした薬剤X またはY を濃度勾配(0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50μM)を加えて添加し、添加しない細胞をコントロールとした。薬剤添加24 時間後に細胞を溶解してトータルRNA を抽出し、定量的RT-PCR 法によりSOX9およびその下流に位置するII 型コラーゲンおよびアグリカンのmRNA 発現を検討したが、いずれのmRNAにおいても濃度依存性の上昇を確認できなかった。 別のオフラベル薬剤を検討するため、新たに1200種類のスクリーニング用薬剤(Prestwick Chemical社)を準備した。マウス軟骨前駆細胞株ATDC5にSOX9プロモーター領域を挿入したベクターをトランスフェクションし定常発現株を作成した。インスリン添加により通常のATDC5と同様に軟骨細胞へ分化することを確認した。分化誘導前のATDC5定常発現株にスクリーニング用薬剤を添加してルシフェラーゼアッセイを行い、1次スクリーニングにて48薬剤に絞り、2次スクリーニングにて分化誘導前および誘導後のATDC5に薬剤を添加して同様の実験を行い16薬剤に絞った。これら16薬剤のうちルシフェラーゼ増感作用のある薬剤を除外した12種類の薬剤を用いて濃度勾配による活性の上昇を検討し、さらに絞り込んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画のヒト軟骨細胞株を用いたin vitro実験は予想と反する結果であったが、ATDC5定常発現株を作成し、これを用いた薬効スクリーニングにより新たに12種類の候補薬剤が同定されており、これらを用いたヒト軟骨細胞株およびATDC5株を用いたin vitro実験を現在進行中である。これらの実験から予想されるデータが得られれば、変形性関節症モデルラットを用いたin vivo実験を進めていくことができる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)12種類の候補薬剤からさらに絞り込み、ヒト軟骨細胞株を用いて定量的RT-PCR法によりSOX9およびその下流に位置するII型コラーゲンおよびアグリカンのmRNA発現を検討し軟骨細胞の脱分化を抑制し得る薬剤の至適濃度を決定する。 (2)ATDC5定常発現株にインスリンを添加しながら培養し軟骨多段階分化モデルとして用い、X型コラーゲンの発現を中心にmRNAレベル(定量的RT-PCR)、タンパクレベル(ELISA、Western blotting)で検討する。これにより薬剤による軟骨肥大化の抑制効果を評価し、(1)の実験結果と合わせて動物実験に用いる薬剤の示適濃度を絞り込む。 (3)麻酔下にマウス膝関節を切開して、前十字靭帯切離および内側半月板を切除することにより、靭帯切離膝OAモデルを作製する。2週および4週で摘出した軟骨組織をアルシアンブルー染色、サフラニンO染色にて軟骨基質の変性を組織学的に確認するとともに、Mankinスコアにて変性の程度を数値化する。またSOX9、II型コラーゲンおよびアグリカンの免疫組織染色を行い、軟骨組織の質的な評価を行う。さらに、薬剤の局所投与実験を施行するために、ウサギ半月板切除によるOA動物モデルも作製して、OA変化を同様に評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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