研究課題/領域番号 |
24592266
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 卓明 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20336035)
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キーワード | 骨粗鬆症 / 骨壊死 / 軟骨性脆弱性骨折 / MRI / 骨折線 |
研究概要 |
骨粗鬆症脆弱性骨折の代表的疾患である大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)と、最も鑑別を要する疾患である特発性大腿骨頭壊死症との鑑別ポイントについて検討した。 その結果、臨床的背景とMRIにおけるバンド像の形態が有用であることが分かった。 臨床的背景では、脆弱性骨折は高齢女性に多く、骨粗鬆症や肥満傾向を有する場合が多いのに対し、大腿頭壊死症の場合は、20-40才台に好発し、ステロイド服用歴やアルコール多飲歴を有する場合が多い。両側発生例は、脆弱性骨折の場合は稀であるが、骨頭壊死症では約50-70%に認められる。レントゲンで大腿骨頭に圧潰を認めた場合、年齢が65歳以上の女性で、ステロイド歴、アルコール歴がない場合は、まず本骨折を考慮する必要がある。 次に、鑑別に際し有用と考えられたのがMRI所見である。大腿骨頭壊死症においてもMRIのT1強調像でのバンド像は特徴的な所見であるが、その形態が鑑別の参考になる。脆弱性骨折におけるバンドは、骨折線を反映しているため、不規則で蛇行しており中枢側に凸で軟骨面に平行な形態をとることが多く、またバンドは骨頭の途中までしか及んでいないこともある。一方、骨壊死の場合はバンド像が壊死層の周囲に形成された修復反応層を反映している。そのため、末梢側に凸の形態をとることが多く、比較的滑らかな線を示すことが多い。さらに、造影MRI を行った場合、骨壊死ではバンド像よりも中枢部は壊死に陥っているため造影されないが、脆弱性骨折の場合は早期であれば造影され得ることも鑑別の一助となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨粗鬆症に伴って発生する代表的な関節内骨折である大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)について、その骨折線の長さと荷重部に対する割合が、重要な予後を左右する因子であることを既に明らかにしており、今回、重要な鑑別疾患である大腿骨頭壊死症との鑑別点も明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回明らかにした大腿骨頭壊死症との鑑別点に加えて、大腿骨頭壊死症との予後の違いを、関節液における骨性マーカーおよび軟骨マーカーなどの観点から検討を加える。そして、これまで明らかにしたMRI画像所見に加えて、摘出骨頭の病理所見や関節液の解析などをあわた検討を加え、最終的に、骨粗鬆症治療薬などの各種薬剤により、関節破壊の予防法の構築を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、画像解析による研究を主体として行い、実験にかかる費用が少なく、加えて学会参加にかかる費用も予想よりも低額で済んだため、翌年度への繰り越しとした。 関節液分析を行い、さらに成果の国内、国外発表を行う。特に、国外における研究成果の普及に努めたい。
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