研究課題/領域番号 |
24592267
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 秀一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40294938)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スタチン / 低分量G蛋白 / 軟骨変性 / 軟骨再生 |
研究概要 |
軟骨変性と軟骨再生過程における低分子量G蛋白と細胞骨格・接着因子の関与についての解析を行うために、siRNAや阻害薬を用いて低分子Gタンパクの機能発現を抑制したモデルを作成し、それらのモデルを用いてメカニズムの詳細な検討を行う。軟骨細胞と滑膜細胞をそれぞれ軟骨、滑膜組織より酵素処理にて分離し、培養ディッシュに接着したものを2~3週間培養して使用した。より臨床に向けた結果を得るために、不死化した細胞株ではなく、初代培養細胞を用いて実験を始めた。低分子G蛋白の阻害薬としては、これまで効果を検討してきたスタチンに加え、Rhoシグナルの下流を阻害するROCK阻害薬であるY-27632を用いた。SimvastatinとY-27632で刺激した細胞の細胞形態は、細胞骨格、運動の抑制により、紡錘状から円形状への変化を認めた。IL-1により24時間刺激後に培養上清のMCP-1の産生濃度をELISA法にて測定すると、SimvastatinとY-27632ともに濃度依存性にMCP-1の低下を認めたが、SimvastatinのほうがよりMCP-1の産生が低下した。これらの結果より、スタチンの効果はRho-ROCK経路を含めた低分子量G蛋白の関与が強く示唆された。次に、低分子量G蛋白のうち、スタチンが主に機能を抑制すると考えられるRhoA、Rac1、CDC42を特異的に阻害するために、siRNAによる低分子量G蛋白のノックダウンモデルの作成を行った。軟骨細胞と滑膜細胞にsiRNAをトランスフェクション後48時間、72時間でそれぞれ細胞蛋白を回収し、ウエスタンブロットでRhoA、Rac1、CDC42の蛋白定量を行った。72時間後のサンプルでより蛋白産生低下を認めたため、今後のメカニズム解析に使用する。細胞形態は、それぞれにおいて細胞骨格、運動の低下によるものと思われる円形状への変化を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における実験の立ち上げで最も重要なステップは、培養細胞の準備、ストック作成と目的因子を適切に阻害するモデルの作成であった。また、軟骨、滑膜細胞両方での検討は、変形性関節症などの関節内疾患を扱う場合には必須であり、多方面からの検討が可能になる。組織より採取した細胞が使用できるまでには約1~2か月程度を要し、多数のドナーサンプルをストックするために、本年度の実験経過で時間を要した部分の一つである。それらの細胞を使って、本研究の目的である低分子量G蛋白の軟骨変性、再生に与える影響を調べるにあたり、スタチンや阻害薬を使用して細胞の前評価を行う必要があった。これに引き続き、同時に3種類の低分子量G蛋白のsiRNAの条件検討を行い、複数回の変更を経てsiRNAの濃度や作用時間を決定し、結果として蛋白レベルでのノックダウンすることに成功した。今後の実験は、これらのモデルを用いてさまざまな環境、刺激下でサンプルを採取し、遺伝子発現や蛋白産生への影響を検討していけるので、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで達成した実験結果をさらに発展させ、本研究の目的遂行のため、詳細なメカニズム解析を効率よく行う。そのためにsiRNAモデルからのサンプル採取を同時にできるだけ行うように計画を立てる。具体的には、細胞からのRNA、蛋白採取をひとつのプロトコールで同時に行い、培養上清も同時に採取することで、PCR、ウエスタンブロット、ELISAなどの機能評価のための実験を同時に行うことができる。結果の考察を多方面からすぐに行い、修正すべきところがあれば、条件検討を再度行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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