研究実績の概要 |
本研究では、ヒト軟骨細胞と滑膜細胞においてsiRNAを用いた手法による特異的な低分子Gタンパクの発現抑制モデルを作成し、軟骨変性と軟骨再生過程における低分子量G蛋白と細胞骨格・接着因子の役割についての解析を行った。 軟骨細胞において3種類の低分子G蛋白のRhoA, Rac1, Cdc42のsiRNAを行った結果では、siRac1のみが有意にtype2 collagen、aggrecan、PRG4などの軟骨特異的遺伝子の発現を促進した。一方、軟骨分化のマスター遺伝子であるSOX9は、siRhoA, siRac1, siCDC42のすべての低分子G蛋白のノックダウンにおいて促進されることがわかり、低分子量G蛋白の抑制により軟骨分化再生を促進することが示唆された。 低分子量G蛋白をノックダウンした滑膜細胞においては、siRac1によりiNOSの発現を抑制し、siRhoAとsiCDC42によりIL6の発現が抑制された。平成26年度では、同サンプルより採取した培養上清のIL6をELISA法にて測定し、RhoAの抑制によりIL6の蛋白産生が抑制されることを確認した。引き続き、RhoA、Rac1、CDC42のそれぞれの過剰発現プラスミドによる強発現モデルの作成も試みたが、プラスミドの導入効率が悪く、複数の条件検討を行ったが、信頼性のあるデータを得ることができなかった。 本研究の成果として、低分子量G蛋白の発現抑制は、スタチン同様に軟骨特異的遺伝子の発現を亢進させ、炎症性サイトカインであるIL6の発現を抑制するという結果を確認した。特に、Rac1の抑制は、すべての軟骨特異的遺伝子の発現を促進させるため、スタチン同様に、Rac1の機能阻害が軟骨再生促進と軟骨変性抑制の両方の効果を有することが示唆する。
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