研究課題
メタボリックシンドロームや糖尿病では骨代謝異常が多く認められる。しかし、生活習慣病で骨代謝調節が破綻していくメカニズム、特に中枢性骨代謝調節の破綻のメカニズムはほとんど解明されていない。本研究では、エネルギー代謝調節の中枢である視床下部弓状核が骨代謝をも調節しうるとの仮説を立てこれを実証し、さらに弓状核の変調による骨代謝調節異常を解明することを目的とした。弓状核のAgouti-related protein (AgRP)ニューロンとProopiomelanocortin(POMC)ニューロンが存在し、エネルギー代謝調節に重要な役割を果たしている。インスリン・レプチンの細胞内シグナルに重要な分子であるPDK1とSTAT3着目し、Cre-loxPシステムを用いて各ニューロン特異的なPDK1コンデショナルノックアウトマウスの骨代謝を解析した。その結果、AgRPニューロン特異的PDK1ノックアウトマウスで低身長と骨密度の低下を認めた。転写因子Foxo1はPDK1により転写活性は負に制御される。つまり、PDK1ノックアウトマウスではFoxo1の活性は常時亢進している。そこで、抑制型Foxo1をCre-loxPシステムによりPDK1ノックアウトマウスに発現させることで、ノックアウトマウスの表現型はFoxo1を介してものであるかの検討を行った。その結果、AgRPニューロン特異的PDK1ノックアウトマウスに認められた低身長・骨密度の低下は抑制型Foxo1の発現により是正された。これらの結果から、弓状核のAgRPニューロン内のFoxo1活性が骨代謝調節に重要であることが明らかになった。
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