研究課題
Transforming Growth Factor-β (TGF-β)ファミリーに分類される成長因子群は、筋骨格系の運動器の発生や維持、再生に重要なことが知られている。本研究ではこの分子メカニズムを解明する目的で、TGF-βの細胞内情報伝達系に共通して重要な転写因子Smad4の役割を解析した。前年度までの成果から、骨格筋組織特異的にSmad4を欠失させたマウスは致死性であることが判明した。この発見は、Smad4が骨格筋の発生に極めて重要な因子であることを示唆する。そこで、Floxed Smad4マウスの骨格筋組織から骨格筋前駆細胞を分取し、Smad4遺伝子座をin vitroで人為的に欠失させることができる細胞株の構築を試み、特に細胞株のクローン化と筋分化能について検討した。その結果、樹立したクローンは、Smad4を誘導性に欠失させることで筋芽細胞への分化が亢進することが明らかとなった。さらに、これらのクローンは、BMP刺激による筋細胞の分化抑制や骨芽細胞様細胞への分化誘導に対して抵抗性を示した。また、TGF-βファミリーの中で、Bone Morphogenetic Protein (BMP) の細胞内情報伝達系でSmad4と協調的に作用するSmad1/5/9の解析から、Smad9が特にSmad4との親和性が高い分子であることを明らかにした。しかし、Smad9はSmad1/5よりも転写活性が低く、むしろ抑制型Smadとして機能することを見出した。以上の結果より、マウス骨格筋の発生・成長過程では、Smad4を介したTGF-βファミリーの細胞内シグナルが抑制的に働くことが生理的に重要な可能性が示唆された。これは、Smad4を介したシグナル制御の異常による疾患に対して、新たな治療標的を提供する可能性が考えられる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件)
Scientific Reports
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Biochmical and Biophysical Research Communications
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