研究課題/領域番号 |
24592279
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 和毅 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60235322)
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研究分担者 |
三戸 一晃 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10445223)
宮本 健史 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (70383768)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニコチン / 骨質 |
研究概要 |
骨質に対するnicotineの影響を調べた。計画した方針に従いin vitroにて骨質劣化研究報(Garnero. 2006)(Vashith. 2001)に準拠し、マウス大腿骨のorgan cultureをnicotine有無の条件下で行い、骨強度・骨質評価マーカー(骨質劣化に伴い蓄積する老化架橋物質advanced glycation endproducts ; AGEsの一つであるpentosidine)の測定を行った。具体的には、まず、control, ribose 0.2M, nicotine 100μg/ml, ribose+nicotineの培養液下に対し6週齢B57Bl6マウス大腿骨(α7nAchR(-/-)とWTにて)を6週培養した後、各群を上評価項目において比較検討した。この結果、WTにてnicotineのみ添加した群で有意に(p=0.024)AGEsが増加した。α7nAchR(-/-)とWTを比較すると、riboseに加えnicotineを添加することでやはりWTではAGEsは増加する傾向があったがα7nAchR(-/-)では変化がみられなかった。骨強度はriboseを添加した群にてWT、α7nAchR(-/-)両者ともに有意な骨強度低下を認めたが, nicotine単独で添加した群は、control群に比しWTにて低下する傾向があったが有意ではなく骨強度の点からは骨質劣化を証明するにいたらなかった。Nicotineに骨質劣化作用があるとの仮定のもとではribose濃度が比較的高い方が作用発現には有利と考えられる一方、これまで適用した0.2Mは濃度が高くriboseと混合した際nicotine作用が明瞭とならないと考え、次に0.02Mとし同様な実験を行ったが結果に大きな変化はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
WTマウスにおいてnicotineによるAGEs蓄積が有意に生じるとの結果を得た。喫煙による骨質劣化を仮定としていたことから、当初の目標の本質となる部分は達成したと考えられる。しかしながら、骨強度の面でこれに応じた有意な結果を得ておらず、さらなる研究継続が必要であると考える。またα7nAchR (-/-)とWT間の比較においては、WTで生じることが明らかとなった骨質劣化がα7nAchR(-/-)では免れる可能性があり、同様に研究継続の余地がある。骨培養による骨質劣化実験はin vitroに相当する。当初に計画していたin vivo実験に相当する糖尿病モデルマウスにnicotineを投与することにより、骨劣化が同様に生じるか、AGEs, 骨強度を今後評価することなどを今後進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
WTにてnicotineにより骨質劣化マーカーであるAGEsが有意に増加することを示すことができ、本研究で選択使用した骨培養モデルは適切であると考えている。ただ、nicotineの骨質劣化作用の程度によっては、ribose濃度を調整することでより有意にその作用を示すことができると考えられ、今後検討が必要である。また、生理的nicotine濃度には幅がありこれに応じ、様々なnicotine濃度の下で再度実験を試みることも重要と考える。WTではみられたAGEs低下、骨強度低下傾向がα7nAchR (-/-)では乏しく、この結果よりα7nAchRが骨質劣化を促進する可能性があり、今後詳細なメカニズムを検討していくこととしている。In vivo実験として、糖尿病マウスに対しnicotineを投与した後、マウス下肢骨のAGEs, 骨強度を評価することを当初考えていた。しかしながら高血糖自体が骨質劣化を引き起こすことも知られており、in vitro実験でも比較的高い濃度の糖にて容易に骨質低下が起きることから、当モデルを用いるには工夫が必要であると現在考えており、さらなるin vitro実験によるdataの蓄積の後、新たなin vivo実験を開始することとしている。 未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のように、本年度は新たなin vivo実験などが始まるため「物品費」(マウス購入費、飼育費、薬品、など)が増大すると考えられる。直接経費の90%程度が「物品費」になる可能性を考えている。
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