研究課題/領域番号 |
24592282
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
谷口 昇 東京医科大学, 医学部, 客員准教授 (20626866)
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研究分担者 |
中島 利博 東京医科大学, 医学部, 教授 (90260752)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 軟骨 / クロマチン蛋白 |
研究概要 |
軟骨表層細胞に特異的なマーカーとして、Superficial Zone Protein (SZP)があり、我々は既に表層細胞におけるHMGB2のとSZPの局在がほぼ一致すること、Hmgb2-/-マウスでは、SZPの発現が6ヶ月齢では低下することを確認している。今回HMGB2が直接SZPを制御する可能性について分子生物学的に検討し、SZPのプロモーターを含むreporter geneにより、Sox5のbinding siteを含む上流-998bpの領域で軟骨肉腫細胞株で転写活性の亢進があることを認めた。今後、この作用が軟骨細胞特異的なものか、またHMGB2のエンハンサーとしての働きについて検討していく予定である。 HMGB2レンチウィルスをマウスより抽出した軟骨細胞に強発現させ、そのSZP発現への影響を観察し、更にsiRNA oligoの導入によりHMGB2及び前述Sox5のノックダウンを施行した結果、HMGB2がSZPの発現そのものを直接制御する確証は得られておらず、HMGB2とSox5のマウス軟骨細胞でのendogeneousな結合も現時点では確認できていない。以上の結果より、Sox5はHMGB2とは相互独立してSZP遺伝子発現を制御している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変形性関節症は高齢者で最も罹患率の高い関節疾患であるが、初期の発症機序とされる軟骨表層の加齢依存的な変性のメカニズムに関しては不明な点が多い。これまで申請者はクロマチン蛋白HMGB2の欠失が加齢依存性の変形性関節症を引き起こすことを主に動物モデルを用いて報告したが、今回HMGB2の軟骨表層の恒常性維持に関する役割を、同様に軟骨表層に特異的に発現し、軟骨保護作用が既に報告されているSZPとの関連を、主に核内転写レベルの観点から検討した。現在のところ、SZP発現にSox5結合領域が関与する可能性は示唆されたが、それに対するHMGB2の役割に関しては更なる検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨表層細胞は未分化な細胞に富むため、今後は軟骨成熟細胞でなく、幹細胞を用いた実験を展開する。HMGB2の間葉系幹細胞(MSC)における役割を解明することにより、軟骨表層の未分化な細胞に特異的に発現する分子とHMGB2、SZPの遺伝子発現制御の関連がみえてくるかもしれない。具体的には、ヒトMSCにおいてHMGB2を強発現させ、軟骨、骨、脂肪など各分化に及ぼす影響について検討する。 また、MSCが軟骨へ分化する際、HMGB2とSZPの発現パターンを調べ、軟骨表層における未分化な細胞の性格について詳細に検討する。さらに野生型とHmgb2-/-マウス骨髄よりMSCを抽出し、各種組織へ分化させ、その過程でのHMGB2の役割について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトMSCを購入し、各種組織(軟骨、骨、脂肪など)への分化能を確認した後、HMGB2を強発現させ、その各分化に及ぼす影響について検討する。 MSCが軟骨分化する際、HMGB2とSZPの発現パターンを調べ、軟骨表層における未分化な細胞はどの過程で発現するのか詳細に調査する。我々のpreliminary dataでは、HMGB2はMSCに発現するがSZPは発現していない。一方、SZPはヒト軟骨細胞では発現が認められる。また軟骨が成熟し石灰化した場合、どちらの発現もみられない。これはSZPがMSCから軟骨に分化する過程で、一過性に発現することを示唆し、その発現に対してHMGB2がどのように関わるかを詳細に検討する。 野生型とHmgb2-/-マウス骨髄よりMSCを抽出し、各種組織(軟骨、骨、脂肪など)へ分化させ、HMGB2の各分化に及ぼす影響について検討する。これら分化の過程で、SZPの発現が野生型と比べ、Hmgb2-/-細胞でどのように変化するか調べる。上記マウス由来のMSCは米国スクリプス研究所Lotz教授の研究室で既に凍結保存されており、供与頂く予定である。この際、MSCに特異的なマーカーの発現をフローサイトメトリーで確認する。
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