研究課題/領域番号 |
24592282
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
谷口 昇 宮崎大学, 医学部, 助教 (20626866)
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研究分担者 |
中島 利博 東京医科大学, 医学部, 教授 (90260752)
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キーワード | 軟骨分化 / SZP / 一過性発現 |
研究概要 |
HMGB2の間葉系幹細胞(MSC)における役割を解明し、加齢依存性に消失するHMGB2の軟骨表層における役割を検討した。初めにヒトMSCの各種組織(軟骨、骨、脂肪など)への分化能を確認した。軟骨分化はII型コラーゲン、骨分化はオステオカルシン、脂肪分化はアディポネクチン等を用いて検出できた。 次にレンチウィルスを用いてMSCにHMGB2を強発現させ、その各分化に及ぼす影響について検討した結果、HMGB2にはMSCの分化能を抑制させる働きがあると考えられた。 さらにMSCが軟骨分化する際、HMGB2とSuperficial Zone Protein (SZP)の発現パターンを調べ、軟骨表層に存在すると考えられる未分化な細胞はどの過程で発現するのか検討したところ、MSCにおいてHMGB2は発現するが、SZPは発現していなかった。一方、SZPはヒト軟骨細胞では発現が認められた。一方軟骨が成熟し石灰化した場合、HMGB2とSZP両者ともに発現がみられなかった。以上の結果より、SZPはMSCが軟骨に分化する過程で、一過性に発現することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで申請者はクロマチン蛋白HMGB2の欠失が加齢依存性の変形性関節症を引き起こすことを主に動物モデルを用いて報告した。軟骨表層細胞は未分化な細胞に富むと報告されているため、今回In vitroの系では、軟骨成熟細胞を用いず、幹細胞を用いた実験を進めた結果、HMGB2は軟骨分化だけでなく、他の細胞への分化能も抑制する機能があることが分かった。また、軟骨表層に特異的に発現し、軟骨保護作用が既に報告されているSZPに関しては、初期発現パターンこそ違うもの、成熟した軟骨細胞では同様に減少する傾向を認め、軟骨表層の未分化な細胞の維持にHMGB2、SZPが深く関わる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
野生型とHmgb2-/-マウス骨髄よりMSCを抽出し、各種組織(軟骨、骨、脂肪など)へ分化させ、HMGB2の各分化に及ぼす影響について検討する。これら分化の過程で、SZPの発現が野生型と比べ、Hmgb2-/-細胞でどのように変化するか調べる。我々は、軟骨細胞への分化の過程で一過性に発現するSZP陽性細胞が、軟骨表層細胞に最も近い表現型を表すと考えている。これらの分子メカニズムの解明は、関節軟骨のtissue engineeringへの新しいアプローチに繋がる。
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次年度の研究費の使用計画 |
野生型とHmgb2-/-マウス骨髄よりMSCを抽出し、各種組織(軟骨、骨、脂肪など)へ分化させ、HMGB2の各分化に及ぼす影響について検討する予定であるが、Hmgb2-/-MSCの確立が遅れているため、この細胞を使った一連の実験が次年度へ延期となった。 野生型とHmgb2-/-マウス骨髄由来のMSCを用いてmicroarrayを行い、HMGB2の下流遺伝子を調査する。独立した野生型とHmgb2-/-マウスから抽出したMSCのデータを比較し、HMGB2によって制御される候補遺伝子について検討する。 上記候補遺伝子とHMGB2との関係をin vitroで証明する。HMGB2レンチウィルスをマウスより抽出した軟骨細胞に強発現させ、その影響を定量的PCRで観察する。更にsiRNA oligoの導入によりHMGB2遺伝子のノックダウンを施行し、その効果を同様に観察し、HMGB2の下流遺伝子を同定する。これらの候補遺伝子を通して、HMGB2が制御する可能性のあるpathwayについて、脂肪分化、骨分化も含めて検討する。
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