慢性閉塞性肺疾患(COPD)症例における骨脆弱化の機序を解明することを目的として、剖検例を用いたCase-Control研究を行った。COPD例、間質性肺炎(IP)例、糖尿病(DM)例および非COPD症例として、男女各20-25例から検体を採取した。非COPD症例は、骨代謝、コラーゲン代謝に影響を及ぼすような代謝性疾患罹患例(糖尿病,内分泌疾患,先天代謝異常症)は除外した。対象年齢は、60歳以上とする。採取組織は、腰椎椎体(1-2椎体)および隣接する椎間板,椎間関節,皮膚,肺実質部,気管軟骨,肋軟骨,大動脈を採取し、これらにおけるコラーゲンの終末糖化産物(AGEs)を測定した。 その結果、各組織AGEs量は、全組織において非COPD症例に比べて、COPD例とDM例では有意に高値であった(T検定) 。これに対して、骨以外の組織のAGEs量は各群間に差はみられなかった。このことから、骨におけるAGEsの増加は、コラーゲン線維の強度変化に直接的に悪影響を及ぼすのみならず、骨芽細胞機能の低下や破骨細胞の活性化を誘導するという生物学的な側面でも悪影響を及ぼす。COPDでは、これまでに報告されている骨密度の低下と共に、骨へのAGEsの増加という骨質の低下も併発することにより骨の脆弱性が高まると考えられる。
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