研究課題/領域番号 |
24592288
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
日垣 秀彦 九州産業大学, 工学部, 教授 (00238263)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イメージマッチング / 国際情報交換 / 合衆国 |
研究概要 |
膝関節における変形性膝関節症患者に術前にCT撮影を行い,術前と術後リハビリテーション終了後のニーリング動作とスクワット動作の動態をフラットパネルディテクターによりX線動画撮影を実施した.これらの動態に対し,術前の膝に関してはCTによる各グレースケール 3Dモデルを用いたX線透過シミュレーション画像によるイメージマッチングを行い,6自由度動態を解析する.術後の人工関節置換膝に対しては使用した人工膝関節機種のCADモデルによるパターンマッチングと膝蓋骨残部に対するイメージマッチングにより人工膝関節の3コンポーネント間の動的相対関係を解析した.その際,2肢位の動画像から人工関節と術前の生体骨に設定した座標系の変換マトリックスを,術後の大腿脛骨においてリモデリングが生じにくいと考えられる長管骨部分のイメージマッチングにより求め,術前術後の同じ骨座標系での動態比較評価も可能にした. 術前における前後十字靭帯や膝蓋靭帯の解剖学的な付着位置を仮定し,各靭帯の緊張度を解析した.術後においても後十字靭帯と膝蓋靭帯の緊張度を比較した.術前術後において後十字靭帯は手術における骨切り量に依存して緊張度が増減することが確認された.6自由度評価における大腿脛骨の座標系の接近量からも確認された.手術前後の膝蓋靭帯の緊張度に変化は確認できなかった.脛骨に対する膝蓋と大腿の相対関係は,術前後で骨のアライメントは改善されるのに対し,術前の膝蓋は大腿のグルーブと形状適合がよく,大腿骨の動態に連動する動態が確認されたが,術後の膝蓋は多くの自由度で機械的に直線的な運動をすることが新たに確認された.さらに,ヘリカルアクシスを指標に相対運動を評価したところ,術前において脛骨に対する膝蓋は屈曲伸展運動よりもティルトやローテーションが主な不安定な動きになっているのに対し,術後は屈曲伸展方向の回転が中心に変わっていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は生体骨と人工関節のそれぞれのマッチング技術を応用した動態解析技術を開発することを目的としていた.さらに,評価技術における座標変換ソフトや軟骨下骨間距離分布計測ソフト,ヘリカルアクシス評価,靭帯付着部間計測等の基本ソフト開発が目的であった. 全てのソフト開発を実施しており,ほぼ完成している. システムの検証として動態解析において,繰り返し精度検定を行ったところ,人工関節の場合,大腿コンポーネントの並進運動と回転運動が0.1mm0.1度以内で脛骨コンポーネントが0.3mm0.2度,生体骨の場合,大腿骨が並進と回転運動で,それぞれ0.2mm0.3度以内,脛骨において0.2mm0.3度以内,膝蓋骨において0.2mm0.2度以内の精度が確認され,整形外科領域における診断においても十分使用できる範囲であった.変形性膝関節症と人工膝関節置換膝を対象とした術前術後の評価においても,術前の代表的な動態や手術によるアライメントの改善,人工関節における新たな動態の発見などが確認され,本年度目指した解析評価ソフトの開発は,次年度に向けた詳細な臨床解析に取って十分な精度と評価技術を有したものであることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの動態解析結果や考察を基に臨床データを蓄積し,生体関節の高屈曲機能における効果的な運動様式や靭帯機能および関節形状パラメータより,PS型人工膝関節において機能再現に効果的な形状パラメータを解析し,実形状の設計を実施する.既存の人工膝関節の置換前後の動態に提案形状をインポーズし,高屈曲に影響すると考えられる膝蓋靭帯の緊張度等を推測し,既存製品に対する優位性をケーススタディーする. これらの知見を基にCADによる各形状パラメータの詳細設計と,各形状パラメータにより誘導される動態のシミュレーションによる形状不備に関しフィードバック再設計を行い,各コンポーネントを試作する.この時,九州大学病院整形外科における術前の骨形状のデータを統計化し,日本人に最適なサイズバリエーションを検討する.さらに,歩行のような複雑な6自由度運動を完全再現可能とするために,独自に開発している膝関節6自由度トライボシミュレータにより,通常歩行や高屈曲運動において製品の故障につながる危険肢位での面圧測定等の力学試験を行い,安全性等を確認する. 試作品の加工に関しては主に九州産業大学のNCマシニングセンタや研磨設備で実施するが,人工関節材料は軟切削性材料であるため,医療機器メーカーとしての観点から研究協力者である泉工医科学工業(株)整形部の協力により,特殊な加工等にご協力いただく.さらに,手術操作性等を考慮し,接合部等の形状は臨床家と医療器メーカーの研究協力者全員とともに協議し,詳細設計を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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