研究課題/領域番号 |
24592289
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
大西 英生 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (20279342)
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研究分担者 |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
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キーワード | 疼痛 / c-fos遺伝子 / トランスジェニック動物 / 光遺伝学 / 蛍光タンパク |
研究概要 |
初年度(H24年度)に得られた結果をもとに、本年度(平成25年度)は以下の実験を行った。c-fos-eGFPトランスジェニックラットを用いで、急性疼痛ストレスとして5%ホルマリン液をラットの後肢に無麻酔下にて皮下注射した。皮下注射90分後にラットを素早く断頭し、脊髄を採取し、HEPRSSバッファー液中に浸した。下肢からの疼痛刺激を受容する第4-5腰髄(L4-5)レベルの脊髄後角を、スライサーを用いて300μmの脊髄スライス切片を作成し、生細胞の状態で蛍光顕微鏡(DS-Qi1Mc; Nikon)を用いて蛍光発現を観察した。コントロールは、生理食塩水をc-fos-eGFPトランスジェニックラットの後肢に皮下投与した。その結果は、コントロール群では観察した脊髄後角にはeGFP蛍光発現がほとんど見られなかった、一方ホルマリン注射群ではL4-5の脊髄後角laminaI‐II層にeGFP蛍光の増加が観察された。したがって、急性疼痛ストレスを負荷後のc-fos-eGFPトランスジェニックラットにおいて、Fosタンパクの発現動態が、脊髄スライス標本ではあるが、生細胞でもeGFPの蛍光タンパクの発現によって可視化できることが明らかになり、本トランスジェニックラットが生細胞でも蛍光発現を観察できる有用なモデルであることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画2年次においては、c-fos-eGFPトランスジェニックラットに急性疼痛ストレスを負荷し、脊髄スライス標本の生細胞でeGFP蛍光タンパクの発現を指標にFosタンパクの発現を観察した。本年度の実験で、c-fos-eGFPトランスジェニックラットを使用することで、生細胞でも急性疼痛ストレスに対する脊髄細胞での活動ニューロンを同定することが可能となった。以上の実験については、おおむね順調に進展している。 当初は目的としていたIn vivoでのeGFP蛍光の観察については、標的とする部位が表面から浅層ではないため、現在の顕微鏡技術では困難であり、一旦研究の方向性を転換する必要があると考えている。以上より、「研究の目的」の達成度については、やや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
計画3年次においては、前年度に引き続きc-fos-eGFPトランスジェニックラットを用い、急性疼痛ストレスモデルにおいて、活性化した細胞群(脊髄後角・視床下部・下垂体前葉・副腎でのeGFP蛍光タンパクを発現する細胞群)において、これまで詳細な作用機序が不明である疼痛関連伝達物質について検討を行う予定である。 具体的には、5%ホルマリン液をc-fos-eGFPトランスジェニックラットの後肢に皮下注射し、ラットを素早く断頭し脳・脊髄を採取、生細胞での300μmスライス切片を作成する。疼痛刺激に反応した生細胞のeGFP蛍光の発現強度を指標にし、各部位での疼痛経路の作用機序が未だに不明である生理的伝達物質・試薬を使用することで、eGFP蛍光陽性細胞と疼痛関連伝達物質が作用する細胞が同部位に局在しているかどうかを検討する。 当初計画していた光遺伝的的アプローチについて、c-fos遺伝子に感受性(光興奮)タンパク遺伝子を挿入した融合遺伝子の作成を終え、トランスジェニックラット動物作出準備が整ったところである。研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会や国際学会に積極的に発表し、国際専門雑誌に英文論文として発表する予定である。
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