研究課題
基盤研究(C)
今年度は,測定系を確立するための基礎的な実験をおこなった.麻酔薬投与実験をおこなうまえに,解析する手法を構築する必要がある.そこで,非侵襲的な実験として,睡眠時の脳磁図を測定した.対象は20~40代の男女8名で,解析に必要となるMRI画像を記録した後,160チャンネル脳磁図測定装置の中で安静仰臥位の状態で,睡眠をとるように指示した.右手には20mLの水の入ったシリンジを持ち,意識消失時には保持できなくなり落とすことで意識の消失のサインとした.60分間の観察期間で8名中4名が睡眠ステージ2以上の睡眠状態となった(これは,脳磁図で観察される波形から判断した),1名は,δ波が監察されステージ4と判断された.合計で3600秒の記録のうち,波形から各ステージに典型的であると考えられる時間を20秒ずつ切り出した.この20秒間を解析の対象とした.まず各チャンネルごとにフーリエ解析をおこない,δ,θ,α,β,γ(low & high)の6つの周波数帯域に分けてパワーを計算し,その結果をマッピングした.意識のある閉眼安静時には典型的なα波が後頭部を中心に観察された.睡眠のステージ2では,いわゆる紡錘波を形成するα~β波が頭頂葉付近に観察された.ステージ3,4ではθ,δ波が前頭部で観察された.このように周波数帯域ごとのマッピングにより脳活動の局在,強度を理解しやすい形で示すことができる.今後は各部位間での関連性conncectivityを計算し,脳内各部位間の関連性の強さから睡眠活動を評価する手法の開発を試みる予定である.
3: やや遅れている
睡眠を麻酔のモデルとして意識評価方法の開発をおこなっている.今後,麻酔下での計測のためには安全性の確保が最大の課題であり,慎重に実験方法の検討をおこなっている.方法が決定した時点で,倫理委員会に申請し実験実施の許可を得る予定である.
意識課題については解析方法が確立しつつあり,倫理委員会の許可が出た時点でボランティアを用いた実験を開始する.記憶課題の開発と実験の実施方法を検討し,予備実験をおこなう.こちらも方法論的な問題が解決した時点で倫理委員会への申請をおこなう.
今年度の目標は,実際に実験用のMRIおよび脳磁図装置の中で麻酔をおこない,その時の脳機能を観測することである.これまでにもfunctionalMRIを用いた解析はおこなわれているが,脳磁図を用いた広範囲の周波数領域にまたがる脳活動の検討およびConnectivityの解析はおこなわれたことがない.今年度は国際学会に参加しなかったため繰越金が発生した.次年度には研究成果をまとめ,公表していく予定である.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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