研究課題/領域番号 |
24592301
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
小野 純一郎 香川大学, 医学部附属病院, 協力研究員 (90363217)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロドメイン / 揮発性麻酔薬 / 静脈麻酔薬 / GABAA受容体 / PRIP |
研究概要 |
マウスwhole bodyを用いた予備実験の結果、マイクロドメイン中のコレステロール濃度やウエスタンブロットのデータの分散が大きすぎて傾向が把握できないため、培養脳細胞に揮発性麻酔薬や静脈麻酔薬を作用させてマイクロドメインを抽出・分析した。麻酔薬暴露の条件は、イソフルラン0.8mM, 8mM、ミダゾラム60μM、120μMをそれぞれ2時間暴露した。その後、マイクロドメイン分画のコレステロール濃度測定、タンパク濃度測定、GABAA受容体タンパク質やPRIPタンパク質(GABAA受容体の膜発現調節タンパク)のウエスタンブロッティングを行った。【コレステロール・タンパク濃度分析】麻酔薬暴露によるコレステロール濃度の有意な変化はなかった。一方、タンパク濃度では、フォーレン8mM群の非マイクロドメイン分画において、対照群を1としたときの相対値比較で有意に減少していた(0.59±0.09, p=0.07)。マイクロドメイン分画のウエスタンブロッティング】 GABAAタンパクは、イソフルラン0.8mMおよびミダゾラム60μM群で有意な増加を認め、イソフルラン8mM群で有意に減少した。PRIPタンパクは検出限界以下だった。【非マイクロドメイン分画のウエスタンブロッティング】GABAAタンパクは、イソフルラン8mM、ミダゾラム120μM群で有意な減少を認めた。PRIPタンパクはイソフルラン8mMで検出限界以下となり、ミダゾラム120μMでは有意に増加した。 イソフルランとミダゾラム間の差異はGABAA受容体の膜発現調節タンパクであるPRIPの発現量が正反対の反応を示したことである。イソフルラン8mMではPRIPは検出限界以下となったが、ミダゾラム120μMでは1.4倍に有意に増加した。二者は共にGABAA受容体を活性化するが、膜発現調節タンパクはイソフルラン8mMで著減する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳細胞培養技術が既に確立されており、当初から麻酔薬暴露実験を順調にこなすことができた。ウエスタンブロッティングの一次抗体の条件設定に多少時間を必要としたが、比較的順調に進展している。マイクロドメインに含まれる脂質分析については、現在予備実験の段階であり、GC-MSの条件設定ができ次第、本実験に着手する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画に従って研究を進めていく。今後2年間でマイクロドメインの可視化を実現する。現在、脂質分子のダイナミクスを捉えるためのツールが幾つか存在しており、その1つが研究計画書にも記載した脂質プローブを用いる方法である。この方法は最もオーソドックスな手法だが、プローブ付加によって細胞毒性が生じることや、細胞本来の性質を修飾してしまう可能性がある。このようなデメリットを回避する手段として、マイクロドメインマーカー遺伝子をエレクトロポレーションによって神経細胞内に直接導入する方法がある。これにより、マイクロドメイン特異的に蛍光物質が発色し、蛍光顕微鏡によって生細胞におけるマイクロドメインの観察ができる可能性がある。手法的に簡便なのは後者であり、予備実験を行った上でどの手法を用いるか決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り、平成25年度研究予算の大半は実験用消耗品費として使用する予定である。大型の設備備品を購入する予定はない。
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