第3のガスメディエータとしての多様な生理活性を有するH2S(硫化水素)の内皮由来血管弛緩反応、抗炎症作用、抗サイトカイン作用が注目されている。侵襲によるストレス(熱傷、敗血症)モデル動物におけるアウトカムを改善したという報告、糖尿病やインスリン抵抗性へのH2Sの関与が報告されている。しかしインスリン抵抗性に伴う血管内皮障害とH2Sの関与についての研究は未だない。本研究ではH2Sがストレス惹起インスリン抵抗性に伴う血管内皮障害に対し、治療へとつながる可能性の有無について評価し、さらにそのメカニズムを明らかにすることである。
平成27年度においては26年度に引き続きストレスモデル動物へのH2S投与による血管内皮細胞機能への影響を検討した。ストレス(侵襲)モデルとして熱傷ラットおよびマウスを用いた。ペントバルビタールで麻酔し、温水で3度熱傷を受傷させた。受傷直後よりLーシステイン1mg/kg HWを経口摂取させた。3日後に屠殺し、上下行大動脈を採取、リング標本を作製し、等尺性張力を測定した。フェニレフリン用量依存性血管収縮反応、アセチルコリン用量依存性血管内皮依存性血管弛緩反応について検討を行った。 平成24-25年度に行った大動脈凍結切片を用いたスーパーオキサイド産生、Nitrotyrosine発現の結果を加味すると、H2Sは侵襲ストレスにより引き起こされる酸化ストレスを抑制し、血管内皮機能を温存している可能性が示唆された。
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