研究課題/領域番号 |
24592304
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
徳丸 治 大分大学, 医学部, 准教授 (40360151)
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研究分担者 |
北野 敬明 大分大学, 医学部, 教授 (20211196)
横井 功 大分大学, 医学部, 教授 (80150366)
古賀 寛教 大分大学, 医学部, 助教 (50468013)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 核磁気共鳴法 / 電子スピン共鳴法 / 脳虚血 / 脳保護 / クレアチンリン酸 / ATP / カルニチン / 病態生理学 |
研究概要 |
1.リンを観測核とする核磁気共鳴法による脳エネルギー代謝の測定 エーテル麻酔下にラットを断頭,速やかに大脳スライスを作成し,酸素化した10 mMブドウ糖加人工脳脊髄液(ACSF)で灌流し,リンを観測核とする核磁気共鳴法(31P-NMR)により高エネルギーリン酸のスペクトルを測定した。この実験系を用いて,脳虚血-再灌流傷害に対するアセチルカルニチン(ALCAR)の神経保護作用を検討した。ALCARの濃度を 0.01,0.1,1 mM と変化させ,虚血-再灌流傷害からのクレアチンリン酸の回復を測定した。0.1 mM において対照群と比較して有意に良好な回復が認められたが, 0.01 mM および 1 mMではその効果は認められず,ベル型の濃度依存性をもつ神経保護効果がみられた。ATPやNAD+/NADHの濃度,細胞内Mg2+濃度には効果が認められなかった。 2.電子スピン共鳴法によるALCARのラジカル除去能の測定 ALCARによるフリーラジカルの除去能をDMPO及びCYPMPOをスピントラップ剤として用いた電子スピン共鳴法(ESR)により測定した。DPPHラジカル(EC50 >1 M)及びアスコルビルラジカル(松本法で発生,EC50 0.3 mM)に対してラジカル除去能が認められた。しかし,ヒドロキシルラジカル,スーパーオキサイドアニオン,メチルラジカルに対するラジカル除去能は認められず,複数の発生系と捕捉系を用いた実験において濃度上昇に伴うラジカル発生量の増加が観察された。 3.チオバルビツール酸反応物質法による抗酸化能の評価 ヒドロキシルラジカルに対して抗酸化能がみとめられなかった。炭素ラジカルに対しては,低濃度(
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り,31P-NMRによる虚血-再灌流傷害に対するALCARの脳保護効果の評価を行い,その至適濃度が0.1 mM付近であることが判明した。 ESRにより,6種類の発生法で発生させた4種類のフリーラジカルについて,2種類のスピントラップ剤を用いて除去能の評価を行った。しかし,ALCARのラジカル除去能はフリーラジカルの種類によって異なり,またその濃度によってはラジカル発生量を増加させる可能性が示唆された。このため,組織中に発生したフリーラジカルの測定およびLC/MSによるメタボローム解析は未実施である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,ALCARの脳保護作用における神経細胞とグリア細胞の役割を解明するため,グリア細胞に対して選択的毒性をもつフルオロ酢酸を人工脳脊髄液に添加して31P-NMRによる実験を引き続き行う。 ALCARのラジカル除去能について,検討対象のラジカルの種類やスピントラップ剤の種類を増やして引き続きESRによる評価を実施する。その上で,組織内に発生したフリーラジカルをスピントラップ剤によって捕捉し定量を試みる。また,平成24年度に未実施であったLC/MSによるメタボローム解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り,フルオロ酢酸など31P-NMRの実施に必要な試薬類の購入やESRのスピントラップ剤であるDMPOやCYPMPO,ラジカル発生系の試薬など必要な試薬や,NMR用試験管,灌流用チューブ,ESR用ディスポーザブル扁平セル,HPLCフィルタなど消耗品の購入費として使用する。また,研究成果を国内学会で発表するための旅費としても使用する。
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